ケア記録の確認、会議の議事録、行政から届いた通知の読み込み、新人研修のマニュアル更新。
介護施設の管理職は、現場のケアに集中したくても、書類業務に時間を奪われ続けています。
ところが、この管理職の書類残業を大幅に削れるツールが登場しました。Googleが提供するGeminiとNotebookLMです。
どちらも無料。システム投資もゼロ。ITの専門知識も不要。
この記事では、介護施設の管理職・経営者・リーダーが今日から試せる5つの活用法を、コピペで使えるプロンプト(指示文)つきで解説します。
Gemini・NotebookLMとは?

Gemini
Googleが開発した生成AIで、テキスト・音声・画像を理解して文章を作成できます。スマホアプリからもPCからも無料で使えます。
またGoogleは、介護分野向けにGemini アプリの Gem に新しいプリセット機能となる「ケア記録アシスト」を日本国内の Google Workspace ユーザーに公開しています。
このケア記録アシストの活用により、介護記録の作成において約 20 %の時間短縮につながることが確認されたと報告されています。
さらにGemini 3.0 Flashは、介護支援専門員実務研修受講試験で99.7%の精度、介護福祉士国家試験では精度100%を記録しています(Google公式発表)。
つまり、介護の専門用語や制度をかなり正確に理解できるAIです。
NotebookLM
こちらもGoogleが提供する情報整理ツール。最大の特徴は、アップロードした資料だけを情報源として回答すること。インターネット上のあいまいな情報が混ざらないため、社内マニュアルや行政資料の検索に向いています。
2025年4月からは日本語を含む50以上の言語に対応し、アップロードした資料の内容をAIナレーター2人が掛け合い形式で読み上げる「音声概要(Audio Overview)」機能も実装されました。
NotebookLMについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
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参考「読む時間がない」Gemini × NotebookLM の連携が最強の時短パートナーになる!
「大量のPDFやマニュアルを読み込む時間がない……」「AIに資料を読み込ませたいけど、コピペが面倒……」AIが徐々に普及し始めて、これまで以上に情報の波に溺れそうになっていませんか。 そ ...
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なぜGemini・NotebookLMを使うべきなのか?

①人手不足と管理業務の板挟み
厚生労働省は、介護人材が2040年度に約69万人不足するとの推計を公表しています。
人が足りない以上、現場のケアに人手を集中させるしかない。そうなると管理職が引き受ける事務作業はさらに膨らみます。
②高額AIシステムじゃないとダメは誤解
介護AI導入というと数百万円のシステムを想像しがちですが、Gemini・NotebookLMはどちらもGoogleアカウントがあれば無料で使えます。
ただし注意点があります。無料版のGeminiやNotebookLMでは、入力したデータがGoogleのAI改善に利用される可能性があります。
介護現場で扱う利用者の氏名・住所・病歴などの個人情報の入力がNGです。また要配慮個人情報の入力も無料版のままでは情報漏洩のリスクがゼロとは言えません。
本格的に業務で使うなら、Google Workspace(有料版)の導入を強くおすすめします。
Google Workspaceでは、入力データがAIの学習・改善に使用されないことがGoogleの利用規約で明記されており、エンタープライズレベルのセキュリティ・管理機能が備わっています。
月額680円〜(1ユーザーあたり)から利用できるため、高額なAI専用システムと比べれば圧倒的に低コストです。
CUC(株式会社シーユーシー)が行ったGemini「ケア記録アシスト」の実証実験では、システム投資ゼロで記録作成時間が約20%短縮されました。しかもプロンプト調整はIT業者ではなく現場の管理者・リーダー職が自分で行ったと報告されています。
国も後押ししている
2025年度には、介護テクノロジー導入支援事業(予算97億円)と、補助率75〜80%の介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策(予算200億円)が実施されています。
厚生労働省は、ケアプランやサービス担当者会議の議事録原案作成に生成AIを活用することで業務効率化につながると明記しています。
介護管理職が得られる5つのメリット

メリット① 記録業務の時間短縮
ケア記録の下書きをGeminiに任せることで、1件あたりの記録時間を約20%削減。夜勤明けの記録品質のばらつきも軽減できます。
メリット② 議事録作成の大幅時短
カンファレンスや会議の音声をGeminiに読み込ませるだけで、決定事項・タスク・申し送りが構造化された議事録が完成します。
メリット③ 社内ナレッジの即時検索
NotebookLMに就業規則・マニュアル・BCP・研修資料をアップロードすれば、「あのルール、どこに書いてあったっけ?」への回答が数秒で返ってきます。
メリット④ 研修資料の作成負担軽減
既存の資料をNotebookLMで整理し、Geminiで研修スライド用のテキストに変換する「2ステップ方式」で、マニュアル作成の時間を圧縮できます。
メリット⑤ 行政通知の読解時間短縮
長大な法改正通知をNotebookLMに入れて「うちの事業所に関係ある部分だけ抜き出して」と指示すれば、ピンポイントで必要な情報が返ってきます。
今日から使える5つの活用法とプロンプト例

活用法① ケア記録の下書き自動生成(Gemini)
手順
- Geminiアプリを開く(スマホ・PCどちらもOK)
- 「Gem」から「ケア記録アシスト」を選択
- 短い音声メモ、テキスト、手書きメモの写真を入力
- SOAP形式またはF-DAR形式の記録草案が自動生成される
- 内容を確認・修正して正式記録として使用
セキュリティ面
Google Workspace環境で利用すれば、入力データはAIの学習に使用されず、エンタープライズレベルのセキュリティ基盤で運用されます。
無料版のGoogleアカウントで使う場合は、利用者の実名や病歴などを直接入力せず、匿名化・仮名化した上で使用してください。
いずれの場合でも、記録を完了する前には必ず人間が確認・承認する必要があります。
活用法② 会議の議事録を10分で完成(Gemini)
手順
- 会議をスマホのボイスメモで録音
- 音声ファイルをGeminiにアップロード
- 以下のプロンプトを入力(下記)
- 生成された議事録を確認・修正して共有
プロンプト例
この会議音声の議事録を作成してください。
以下の形式でまとめてください:
【日時】
【参加者】
【議題】
【決定事項】(箇条書き)
【次回までのタスク】(担当者名つき)
【申し送り事項】
ポイント
プロンプトのテンプレートを事業所内で統一すれば、誰が担当しても同じ品質の議事録ができます。従来40〜50分かかっていた議事録作成が10分以内で完了するケースが報告されています。
活用法③ 事業所内FAQの構築(NotebookLM)
手順
- NotebookLM にアクセス
- 新しいノートブックを作成
- 以下の資料をPDFでアップロード:
- 就業規則・社内マニュアル
- 処遇改善加算の説明資料
- 感染症対応フロー
- BCP(事業継続計画)
- 過去の研修資料
- 自然な言葉で質問するだけで、アップロード資料の中から回答が返る
プロンプト例
新人スタッフが初日に確認すべき安全管理のルールを、
アップロードされたマニュアルから抜き出して、
チェックリスト形式でまとめてください。
ポイント
NotebookLMはアップロードした資料だけを情報源にするため、ハルシネーション(嘘の情報生成)が起きにくい設計です。回答には出典箇所も表示されるため、「その情報、どこに書いてあるの?」への確認も即座にできます。
活用法④ 研修資料・マニュアルの作成支援(NotebookLM+Gemini)
ステップ1:NotebookLMで情報を整理
- 既存のマニュアル、事故報告書、研修記録をアップロード
- 「移乗介助で特に注意すべきポイントを整理して」と質問して内容を構造化
ステップ2:Geminiで研修資料に変換
プロンプト例
以下の内容を、新人介護職員向けの15分間研修資料にまとめてください。
・見出しは3つまで
・各見出しに具体的な場面例を1つずつ入れる
・最後に確認クイズを2問つける
・難しい専門用語には平易な言い換えを()で補足する
【内容】
(NotebookLMで整理したテキストを貼り付け)
ポイント
Geminiは音声入力にも対応しているので、「口で説明するだけ」で下書きが進みます。通勤時間に話すだけで研修資料の骨子ができあがる、という使い方も現実的です。
活用法⑤ 行政通知・法改正文書の要点抽出(NotebookLM)
手順
- 行政通知のPDFをNotebookLMにアップロード
- 自事業所に関係ある情報だけを抽出(下記参照)
- さらに「音声概要」機能を使えば、2人のAIナレーターが掛け合い形式で内容を解説するポッドキャスト風の音声が生成される
プロンプト例
この通知のうち、通所介護(デイサービス)に関係する変更点だけを
箇条書きで教えてください。対応期限があれば明記してください。
ポイント
音声概要は「通勤中に聞き流す」使い方が便利です。目を通す時間が取れなかった通知も、車の中で耳から理解できます。
注意点・よくある誤解

「AIが書いた記録はそのまま使える?」→ 必ず人の目で確認する
Geminiが生成するのはあくまで草案(下書き)です。
利用者の個別性や微妙なニュアンスは、最終的に介護職の目で確認・修正する必要があります。「AIが作った→そのまま提出」は避けてください。
「個人情報をAIに入れて大丈夫?」→ ツール選びが重要
無料版と有料版で大きく異なります。
無料版(個人アカウント)
- 入力したデータがGoogleのAI改善に利用される可能性がある
- 利用者の実名・住所・病歴・介護度などの要配慮個人情報をそのまま入力するのは避けるべき
- 使うなら匿名化・仮名化してから入力するルールを事業所内で徹底する
- 議事録や研修資料など、個人情報を含まない業務から始めるのが安全
Google Workspace(有料版)
- 入力データがAIの学習・改善に使用されないことが利用規約で明記されている
- エンタープライズレベルのセキュリティ・管理者コントロールが利用可能
- 「ケア記録アシスト」もWorkspace環境での利用が前提
- 月額680円〜/ユーザーで導入可能
おすすめの段階的導入
まずは無料版で個人情報を含まない業務(議事録・研修資料・行政文書の読解)を試し、効果を実感できたらGoogle Workspaceに移行してケア記録など個人情報を扱う業務にも展開する、という2段階が現実的です。
「導入にはIT担当者が必要?」→ スマホとGoogleアカウントがあれば始められる
必要なものはこれだけです
| 必要なもの | 費用 |
|---|---|
| Googleアカウント | 無料 |
| Geminiアプリ | 無料(スマホ・PC) |
| NotebookLM | 無料 |
| インターネット環境 | 既存のものでOK |
| Google Workspace(本格運用時) | 月額680円〜/ユーザー |
まとめ
全部を一度に始める必要はありません。明日の会議を録音して、Geminiに議事録を作らせてみてください。
40分かかっていた作業が10分で終わったとき、「ほかにも使えるかもしれない」と自然に思えるはずです。
介護の仕事は、人でなければできないことの連続です。だからこそ、人がやらなくていい書類業務はAIに渡す。管理職の残業が1時間減れば、その1時間は現場に出る時間にも、自分を休ませる時間にもなります。
ぜひ個人情報に注意しながら、活用を進めていってください。

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もう少し体系的に知りたい方は、当社のAI活用支援についてのご紹介もあわせてご覧ください。
