プレゼンティーズムを数字で見える化する方法SPQ(東大1項目版)で始める健康経営の効果測定

健康経営支援の現場でいちばん多く受ける相談があります。

 

「健康経営に取り組みたいんですが、効果が見えなくて、社内に説明できないんです」

 

ここでつまずく中小企業は本当に多い。施策はやっている、でも数字で語れない。


この壁を超えるカギが、プレゼンティーズムの数値化です。経済産業省のガイドブックでも、健康経営の効果測定の中心指標として位置づけられています。

 

この記事では、社員10人規模の中小企業でも今月から始められる最小構成のプレゼンティーズム測定を、現場で実装してきた手順そのままに整理します。

 

プレゼンティーズムとは何か?

怒られる女性

プレゼンティーズム(Presenteeism)は、ひらたく言うと「出勤はしているけれど、心身の不調で本来のパフォーマンスが出ていない状態」を指します。

 

腰痛で集中できない、花粉症で頭がぼんやりする、不眠でミスが増える――これらはすべてプレゼンティーズムです。

 

よく対比されるアブセンティーズムとの違い

用語 意味
アブセンティーズム(欠勤) 体調不良などで休んだ・休職した状態
プレゼンティーズム 出勤しているがパフォーマンスが下がっている状態

 

実は、企業にとって経済的な損失が大きいのはプレゼンティーズムのほうだと、多くの研究で示されています。


休んでいる間のロスより、出勤しているけれど力が出ていない時間の総和のほうが、年間で見るとはるかに大きいからです。

 

なぜいま中小企業がプレゼンティーズムを気にすべきか

理由は3つあります。

  1. 健康経営優良法人の認定要件で、効果測定の指標として明記されている
  2. 人手不足の中で、一人当たりのパフォーマンスを底上げすることが経営課題になっている
  3. 数字で語れるようになることで、健康経営の施策に予算がつきやすくなる

 

この3つの理由があるからこそ、プレゼンティーイズムを測定する必要があるのです。

 

経済産業省が紹介する3つの代表的な測定方法

経済産業省「企業の『健康経営』ガイドブック」では、代表的なプレゼンティーズム測定指標として以下の3つが紹介されています。

 

WHO-HPQ(世界保健機関・健康と労働パフォーマンス質問票)

世界的に広く使われている標準的な指標で、設問数は十数問。


学術的妥当性が高い反面、設問が抽象的で日本人には答えにくいという現場の声もあります。

 

WLQ(Work Limitations Questionnaire)

身体・精神・対人関係など複数の側面から仕事の制限度合いを測る指標。


詳細な分析ができますが、設問数が25問前後と多く、回答者の負担が大きいのがネックです。

 

SPQ(東大1項目版)――中小企業に最適な選択肢

SPQは東京大学が開発した、設問たった1問のシンプルな指標です。


研究目的・商用目的ともに無料で利用でき、健康経営銘柄2023に選定された企業の中でも複数社が採用しています。

 

中小企業が最初に導入するなら、まずSPQ一択で問題ありません。

 

SPQ(東大1項目版)の使い方――設問・計算式

運用

ここから実務に入ります。SPQは驚くほどシンプルです。

SPQ

病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事を評価してください。

 

社員にこの1問を答えてもらうだけです。

 

 計算式(絶対的プレゼンティーズム損失割合)

計算式はとても簡単です。

プレゼンティーズム損失割合(%) = 100% − 回答値

 

たとえば社員10人の平均回答値が「85%」だった場合、

100-85=15(%)

 

つまり約15%の生産性が、心身の不調により失われていると読み取れます。

 

損失額の概算(経営者向けの数字)

経営者に説明するときは、金額に換算するのがいちばん刺さります。

 

損失額の概算 = 平均年収 × プレゼンティーズム損失割合 × 従業員数

 

社員10名・平均年収400万円・損失割合15%の会社なら、

 

400万円 × 15% × 10人 = 600万円/年

 

年間600万円分の人件費が、本来出せるはずだったパフォーマンスとして失われている計算になります。

 

健康経営施策に年間50万円使っても、損失割合を1〜2%改善できれば十分回収できる、という試算が成り立ちます。

 

中小企業が最小構成で始める「3ヶ月測定運用」

アイデア

SPQの仕組みが分かったら、運用は3ヶ月単位で組むのが現実的です。

 

1ヶ月目:ベースライン測定

  • 全社員にSPQ1問を匿名で回答してもらう(紙でもGoogleフォームでもOK)
  • 回答期間は1週間
  • 集計し、プレゼンティーズム損失割合の平均値を算出
  • これが「現状の数字」=ベースラインになります

 

2ヶ月目:施策の実行

ベースラインを見て、いちばん大きな課題に絞った施策を1つ実行します。


たとえば

  • 腰痛・肩こりの不調が多そう → 出張整体やストレッチ研修
  • メンタル不調の兆しがある → 個別カウンセリング窓口の設置
  • 睡眠の質が低そう → 睡眠セミナー

    施策は1つに絞るのがコツです。複数やると、どれが効いたか分からなくなります。

     

    3ヶ月目:再測定と効果判定

    施策実施から1ヶ月後、再度SPQを実施。


    ベースラインと比較し、損失割合が何%改善したかを確認します。

     

    上記の3ヶ月サイクルを年4回、回して効果を確認することが大切です。これだけで、健康経営優良法人の申請書に書ける「効果測定 × 施策 × 改善」のPDCAサイクルが完成します。

     

    注意点・よくある誤解

    プレゼンティーズム測定を導入するときに、現場でよく出てくる誤解を3つだけ。

    「主観の数字なんて信頼できない」は誤解

    たしかにSPQは自己申告ですが、WHO-HPQとの相関業務指標との関連性が複数の論文で確認されており、一定の妥当性が認められています。


    完璧な客観指標を待っていても始まらないので、「ざっくり方向性をつかむ」用途として割り切るのが実務的です。

     

    「匿名性が確保できないと、社員は本音を書かない」

    これは本当の話です。回答用紙に個人名・部署名を書かせると、平均値が実態より高めに偏ることが知られています。


    社員10〜30人規模の場合は、部署名すら書かない完全匿名で集計したほうが、本音の数字が取れます。

     

    「経年比較で改善した・悪化したと結論づける」のは早い

    プレゼンティーズムの数値は、季節要因(花粉症・繁忙期)や景気・人事異動にも影響を受けます。


    1回の比較で「効いた/効かなかった」を結論づけず、複数回・複数の指標を組み合わせて評価することが大切です。

     

    まとめ

    健康経営は「やっています」より「この数字が、これだけ動きました」のほうが、何倍も社内外を動かします。そして、その数字を作る最小構成は、設問1つ・無料・社員10人から始められます。

     

    今日kらできる最初の一歩を、ひとつだけ提案します。

    今日からできる!

    GoogleフォームでSPQの設問1つだけを作成し、社員に回答してもらう

     

    このフォームを社員に共有するだけで、自社のプレゼンティーズムがすぐに数字になります。

     

    数値化できないものは改善できないと言われるように、まずは取り組むのであれば改善してより良い職場にするためにも、ぜひSPQを測定してみてください。

     

     

    「それでも現場が忙しい」「健康経営の効果測定をどう設計するかまだわからない」「自社の課題に合った測定指標を選びたい」

     

    そんなときは、当社の健康経営支援サービスもあわせてご覧ください。

     

    ヒアリングを通して、貴社の健康課題・健康施策を一緒に考えさせていただきます。

     

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