コロナ以降テレワークの導入により、デスクワークをされる時間が長くなった方多かったのではないでしょうか。
経済活動が再開した現在もテレワークを定着させるべきとの意見を7割の方が、電通総研と電通未来予測支援ラボが行った調査「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」で回答しています。
一方でテレワーク中に座って作業している時間が長くなると、腰痛で悩むケースも多くいらしゃいます。普段からデスクワーク作業をしている方はカラダに不調を抱えていることが多く、仕事のパフォーマンスにも影響してきます。
今回はデスクワークが及ぼす健康問題と生産性への影響について解説し、オフィスでもできる簡単な症状別の体操をお伝えしています。現在不調でお困りの方はぜひ実践してみて下さい。
デスクワークが及ぼす健康への影響
デスクワーク作業はじっと座って作業しているため、パソコン作業を必須とする仕事ではトイレ以外で立つことも少なく、活動量が極端に減っています。
歩く機会が減少することから、普段の通勤が車の方は1日1,000歩も歩かない場合もあるので、健康面では特に注意しなくてはいけません。 ここからはデスクワーカーが抱えるカラダの不調とその原因について詳しく見ていきましょう。
デスクワーク時の身体症状
デスクワークで多い症状には、以下のようなものがあります。
肩こり・首こり
デスクワークでは長時間同じ姿勢で作業することになります。このとき無意識にカラダよりも前に頭の位置してしまうため、肩や首に負担がかかり、筋肉がこりやすくなります。
長期間続くとストレートネックになることもあります。 また鎖骨周りが硬くなることで、リンパの流れも悪くなることから、老廃物の除去が滞り疲労感も覚えることも、肩こり・首こりの原因です。
腰痛
座りっぱなしで作業していると自然と姿勢が悪くなった経験はありませんか。長時間同じ姿勢でいると骨盤が丸くなり、腰への負担が増え腰痛を引き起こす原因になることがあります。
同じ作業をしていると筋肉だけでなく、骨を支える靱帯や椎間板にも影響し病気の原因にもなることがあります。立っているときよりも座っているときの方が背骨と背骨の間にある椎間板への負荷は大きくなることが研究でもわかっています。
手首の痛み・しびれ
マウスやキーボードを長時間使用することで手首に負担がかかり、痛みやしびれが生じることがあります。悪化すると腱鞘炎になるケースもいます。
目の疲れ・ドライアイ
モニター作業中は瞬きの回数が減っている報告もあり、長時間のディスプレイの閲覧によって目が疲れたり、乾燥した状態になることがあります。
頭痛
デスクワーク中に長時間同じ姿勢でいることや、目の疲れが原因となり頭痛を引き起こすことがあります。頭痛も片頭痛がするタイプや、頭全体が痛むタイプがあります。
不眠
長時間の作業やプロジェクトの締め切りなどが原因でストレスがたまり、不眠症を引き起こすことがあります。
コクヨ株式会社が、デスクワークに従事する日本のオフィスワーカー6178名を対象に「デスクワークの実態と健康意識」でも類似した結果が報告されています。
また令和元年の国民生活基礎調査の「性別にみた有訴者率の上位5症状」にも腰痛・肩こり・手足の関節が痛むが挙がっています。
症状が起こる原因
腰痛・肩こりなどの症状はみなが同じ原因で出現するわけではありません。人によって原因もまた複数存在します。
デスクワークは慢性的な身体活動量の低下、長時間の座りがちな姿勢、目の疲れ、ストレスといった健康問題が症状を引き起こしている主な原因となっていることが知られています。
身体活動量の低下
デスクワークは長時間座っているため、活動量の著しく低下します。慢性的な身体活動量の低下は、肥満、糖尿病、心臓病、高血圧、脳卒中などの疾患のリスクを高めることがあります。
座りすぎは死亡リスクを高める研究もあるため、オフィスでも立って作業する、トイレ以外でも小休憩の際に歩くといった動作をできるだけ回数を多く行うように心がけると良いでしょう。
姿勢の問題
デスクワークは長時間同じ姿勢で作業することが多いため、姿勢の問題を引き起こすことがあります。前述しましたが、モニターを見ているときに前かがみになることで、背中や首の筋肉に負荷がかかり、痛みやコリが生じます。
例えば椅子の背もたれに寄りかかって座ったり、頭を前に突き出して座っているとし猫背になりやすく、この姿勢が肩こり・腰痛の引き金となってしまいます。
スタンディングデスクが浸透してきているのは、座っているよりも立っている時の方が細かな揺れを筋肉を使ってバランスを取っているので、活動量が増えるからです。 自分の姿勢に気をつけるだけでなく、こういった環境から変化させていくことも大切になります。
スタンディングデスクについてはこちらで記事でも解説しています。
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目の疲れ
長時間パソコンの画面を見つめることは、目の疲れを引き起こし、目のかすみ、乾燥、痛み、頭痛、集中力の低下などの症状を引き起こします。
これは画面の明るさやモニターとの距離などが影響しているので、環境を整えてあげることがまずは大切になります。
VDT症候群
- 近視
- 角膜炎
- ドライアイ
- 吐き気 など
目の疲れの原因や対策はこちらの記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
ストレス
デスクワークによるトレスもカラダの不調を引き起こす原因になります。締め切り間近な作業をしていたり、ミスできないような仕事をしている方は強いストレスを受けることで身体症状が出る傾向にあります。
またそれだけでなく精神的な健康に影響し、うつ病などで半年〜1年休職される方も中にはいます。
健康問題が生産性に与える影響
経済産業省が公表している「健康経営の更なる発展に向けて」の中で、生産性が向上する理由について「個人の心身の健康」が挙げられています。
健康面が生産性に影響することはなんとなく想像がつくかと思いますが、健康と生産性については健康経営におけるプレゼンティーイズムとアブセンティーイズムに関連しています。
両者の詳細はこちらの記事で詳しく解説していますのでご参照いただければと思いますが、特に問題となっているのがプレゼンティーイズムです。
プレゼンティーイズムとは健康問題があるにも関わらず仕事をしている状態のため、例えば花粉症や腰痛で仕事に集中できないといった状態に陥っている可能性があります。
またユナイテッド・コミュニケーション株式会社による調査では、高ストレス者一人当たり150万円のコスト損失になる可能性が報告されています。
(出典)ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株 式会社『本邦初:ストレスによる企業のコスト損失額は、高ストレス者一人当たり 150 万円に達する可能性があることが判明 』
過度なストレスは脳の処理能力を低下させ、作業効率やミスに繋がり、結果として生産性が低下してしまうため、ストレスを軽減させることも生産性向上においてはとても重要なのです。
なお損失額の計算では、「SPQ(Single-Item Presenteeism Question 東大 1 項目版)」が最も使用しやすいので、多くの企業で使用されています。
(参考)東京大学未来ビジョン研究センター
オフィスで出来るかんたん症状別セルフケア
デスクワークのお悩みで多い症状別のセルフケア動画を弊社では作成しています。
簡単に座ってできる内容をメインとしていますので、動画を参考にしてぜひオフィスで実践してみましょう。
肩こりケア
首こりケア
腰痛ケア
目の疲れケア
ぜひ症状緩和のためにお役立てください。【会社の健康サポートチャンネル】
おわりに
生産性にも影響する健康問題は個人だけでなく、企業側も支援することは企業価値向上に繋がります。 持続可能な経営を目指す上で、働く人を大切にする企業に市場の資金は集中する傾向にあります。
企業と個人が長く健康で働き続けられる社会を目指すことが、社会からの好印象につながるため、健康支援は企業の成長にとってはこれから必須となるでしょう。
参考文献
- 2019年 国民生活基礎調査の概況
- 岡浩一朗『「座りすぎ」が寿命を縮める』大修館書店
- 経済産業省健康経営オフィスレポート
- 経済産業省健康投資管理会計ガイドライン