ケアマネ業務でAI活用できていますか?
「実際の業務で使えるのだろうか?」
「個人情報があるので使ってはダメでしょ」
そう思われているかもしれませんが、結論、AIは使えます。ただし「業務用アカウント」が前提です
介護支援専門員の仕事は、対人援助の専門職です。ところが一日を振り返ると、人と向き合っていた時間より、文字を打っていた時間のほうが長い。そんな日は珍しくありません。
例えば業務の1つである議事録・記録業務は、生成AIで大幅に短縮できます。
ただし、無料の個人アカウントのまま利用者情報を入力する使い方は絶対に避けなければいけません。
要点は4つです。
Point
- 議事録は「録音 → 文字起こし → AIで要約」の三段階にする
- 事実の整理は資料読み込み型のNotebookLM、文案づくりは対話型のGemini
- 無料の個人アカウントは、入力内容がAIの改善に使われる場合がある
- Google Workspaceなど法人向け契約なら、学習に使われない扱いが契約側で担保される
今回は、ケアマネ業務でAIをどのように使い、どのようなツールを選べばよいのかを、わかりやすくお伝えします。
ツールは2つを使い分けるべき

今回は導入しやすいGoogleのツールをご紹介します。
ゼロから資料を作るならGemini、事実を整理するならGemini Notebook(旧:NotebookLM)を活用するようにします。
①対話型のAI
GoogleのGemini(ジェミニ)やChatGPTがこれにあたります。
何も渡さなくても、こちらの指示だけで文章を作ります。言い換え、整文、たたき台づくりが得意です。
②資料を読み込ませて使うAI
GoogleのGemini Notebookが代表例です。
手元の資料(会議の文字起こし、マニュアル、通知文など)を渡すと、その資料の中だけを根拠に答えます。渡していないことは、基本的に答えません。
| Gemini(対話型) | Gemini Notebook(資料読み込み型) | |
|---|---|---|
| 特徴 | 指示だけで文章を作る | 渡した資料の中だけを根拠に答える |
| 得意 | 言い換え、たたき台、目標案 | 議事録の要約、通知文の読み解き |
| 注意 | 事実でない内容が混ざることがある | 渡していないことは答えない |
議事録づくりに対話型AIを使うと、話し合われていない内容がもっともらしく混ざることがあります。
いわゆるハルシネーション(もっともらしい嘘)です。
事実を扱う場面では、資料読み込み型が安全に利用できるので、こちらを利用するようにします。
実務で使える3つの方法

実際にケアマネ業務で、そのまま貼って使える指示文の例をここからはお伝えします。
GeminiのGemなどに登録しておくと、繰り返し使えるので、ぜひ活用してみてください。
Gemについての使い方がこちらの記事で詳しく解説しています。
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参考【Gemini】新機能「Gem共有」が仕事を変える!明日から使える活用法3選
「せっかく作った優秀なプロンプト、他の人にも使ってもらいたいな…」GoogleのAI、Geminiを使っていると、そんな風に感じたことはありませんか? 一人で使うだけでも非常に強力なツー ...
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① 議事録は「文字起こし → 要約」の二段構えにする
やり方は2段階です。
第1段階:音声を文字にすること
スマートフォンやパソコンの文字起こし機能を使い、会議の音声をテキストにします。
この時点の文章は、まだ読めたものではありません。「えー」「あのー」が入り、話者が入り混じり、途中で話題が飛びます。それでかまいません。
第2段階:テキストをAIに整理させること
ここで資料読み込み型(Gemini Notebook)の出番です。文字起こしを読み込ませて、次のように指示します。
# 役割
あなたは介護分野の記録作成を補助するアシスタントです。
# タスク
読み込ませた文字起こしは、サービス担当者会議の記録です。
以下の【出力形式】で議事録の下書きを作成してください。
【出力形式】
・検討した内容(3〜5点)
・決定したこと
・次回までに誰が何をするか(担当と期限がわかる形で)
・記録に残す必要がある発言(発言の趣旨のまま)
【条件】
・文字起こしに書かれていないことは書かないこと
・判断がつかない箇所は【要確認:内容】と記載すること
・推測で情報を補完しないこと
・議事録の本文のみを出力し、前置きや後書きは出力しないこと
※個人を特定できる情報は含めていません
ポイントは、「書かれていないことは書くな」と「わからないものは要確認と書け」と記載しているところです。
この2つを入れると、下書きの信頼度が変わります。とくに後者が重要で、AIは指示がないと、聞き取れなかった箇所をそれらしく作ってしまいます。
勝手に作らせないために、印を付けさせる。確認すべき場所が可視化されるので、見直しの時間も短くなります。
出てきたものは、あくまで下書きです。そのまま提出できるものではありません。
けれど、白紙から書き起こす作業と、出てきた文章を直す作業では、かかる時間も、消耗の度合いも違います。
Geminiとうまく組み合わせると、国のフォーマットに沿った形の議事録を作成することもできます。
型② 現場の記録を「読める日本語」に整える
次は、施設のケアマネに特に活用いただきたい、他者が書いた記録の扱いです。
ケアプランやモニタリングに反映するには、看護・介護記録の内容を正確に読み取る必要があります。
ところが記録の書き方には差があります。専門用語が抜けていたり、主観と事実が混ざっていたり、文章として意味が取りにくかったり。
ここでAIを使います。
# 役割
あなたは介護記録の校正を補助するアシスタントです。
# タスク
以下は、介護職員が書いた記録です。
内容を変えずに、介護記録として適切な日本語に整えてください。
【条件】
・事実と、職員が推測した部分を分けて書くこと
・元の文にない情報は足さないこと
・意味が読み取れない箇所は、修正せず【確認が必要】と示すこと
・整えた記録のみを出力すること
【記録の本文】
(ここに貼る/氏名・事業所名は伏せる)
※個人を特定できる情報は含めていません
「意味が読み取れない箇所は、修正せず示す」の一行を必ず入れてください。
この指示がないと、AIは文脈から意味を推定して、それらしい記録に仕上げます。
書いた本人の意図と違う内容が、整った日本語として整理されても、事実とは異なることが記載されていたら危険です。
この作業はケアマネが一人で抱えないことが大切です。
整えた文章があっているかわからない時は、書いた本人に「こう直したけれど、言いたかったのはこの意味で合っていますか」と確認するまで行うことが大切です。
③ 計画書・支援経過の「たたき台」を5案出させる
長期目標と短期目標の表現、支援経過の言い回し、家族への説明文。書けないのではなく、最初の一行が出てこない。ここで止まっている時間が、実はかなりあります。
対話型AIに、条件を伝えて複数案を出させます。
# 役割
あなたは介護支援専門員の文案作成を補助するアシスタントです。
# タスク
以下の方の短期目標の案を、表現を変えて5つ出してください。
【対象者の状況】
80代女性、要介護2、独居。
膝の痛みで外出が減り、週2回の通所を利用中。
本人は「近所の集まりにまた行きたい」と話している。
【条件】
・本人の言葉に近い表現を1つは入れること
・実現可能で、評価できる書き方にすること
・5案を箇条書きで出力し、解説は付けないこと
※個人を特定できる情報は含めていません
複数案を出させるのがポイントになります。
1案だと、それだけに引きずられます。
例えば5案並ぶと、「これは違う」「この表現は近い」と、自分の判断が動き始めます。AIに決めさせるのではなく、自分が選ぶための材料を並べさせる。これが、専門職としての使い方です。
なお、ニーズや目標の言い換えについては、ケアプランをアイデア出しにAIをどう使う?ケアマネの「言葉が出てこない」を解消する5つの活用法でも詳しく扱っています。
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なぜ無料の個人アカウントでは危ないのか

上記のような回答をAIに求める時、個人が無料で使えるアカウントで利用してはいけません。
個人向けの無料AIは、業務情報を入力する前提で設計されていないためです。
ただし、ここで多い誤解を先に解いておきます。
①「無料版は全部、学習に使われる」は正確ではない
Gemini Notebook(旧NotebookLM)については、アップロードした資料や対話の内容が、Googleの基盤モデルの学習には使用されないとGoogleが説明しています。
無料で使っている場合も同様とされています。
つまり「無料だから学習される」と一括りにするのは、事実として正確ではありません。
②それでも人の目に触れる経路と、管理できない問題は残る
一方で、対話型の個人向けGeminiアプリなどでは、アクティビティの設定によって、会話の一部が品質改善のために保存され、担当者による確認の対象となる場合があります。
フィードバックを送信したときに内容が確認されうる点も、無料・法人を問わず残ります。
さらに大きいのが、事業所として管理できないことです。
職員個人のアカウントに業務情報が入っている状態では、誰が何を入力したかを把握できず、退職時に止めることもできません。
論点は「学習されるかどうか」だけではない、ということです。ここを混同したまま「学習オフにしたから大丈夫」と判断してしまうのが、いちばん危ない状態です。
そして介護の情報は、他業種と重みが違います。
利用者の病歴、心身の状態、障害の有無。これらは個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたる性質のもので、通常の個人情報より厳格な取扱いが求められます。
個人情報保護委員会も、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認するよう注意喚起しています
(出典):個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
「便利だから使う」の前に、「どのアカウントで使うか」を決めておく必要があるということを理解しておいてください。
Google Workspaceを勧める4つの理由

弊社が事業所様にご提案する際、Google Workspace(グーグル ワークスペース/法人向けの契約)を軸にすることが多くあります。
理由は4つ。
- 学習に使われない:法人向けの有料エディションでGeminiやGemini Notebookを使う場合、入力したプロンプト・資料・生成された回答は、生成AIモデルの学習には使用されない扱いとされています
- アカウントを事業所が管理できる:個人アカウント運用では、退職時に何も止められません
- 共有範囲を制御できる:誰がどのファイルを開けるかを管理画面で決められます
- 資料の置き場所が揃う:AIに読ませる資料も法人管理下に置けます
プランにより扱いは異なり、仕様も更新されます。導入時は公式情報でご確認ください。
契約は法人の判断ですが、「業務用アカウントが要る理由」を管理者に伝える材料は、現場の状況を踏まえて伝えるようにしてください。
入力しないと決めておく5項目

法人アカウントでも、線引きは必要です。ルールとして紙1枚に、以下の内容だけは書いてください。
- 氏名(利用者・家族・職員のいずれも)
- 住所・電話番号・居室番号
- 生年月日・被保険者番号などの識別番号
- 事業所名・法人名(組み合わせで特定につながるため)
- 元データのままの写真・音声ファイル
そして、代わりに使う表現を並べて書きます。「Aさん」ではなく「80代女性」。「〇〇苑」ではなく「当事業所」。
またルールの項目を増やしすぎないでください。 10項目のルールがあっても、誰も覚えません。5つなら、事務室に貼れば頭に残ります。
事業所全体のルールづくりについては、別記事「職員はもう使っています|介護事業所のAI利用ルールを、管理者が3ステップで整える」で詳しく扱っています。管理者の立場で読まれる場合は、そちらもあわせてご覧ください。
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よくある質問
Q. 無料のままで使う方法はありませんか。
A. 利用者情報を含まない業務(研修資料の下書き、行事の案内文、レクの企画案)なら、無料から始めて問題ありません。まずそこで慣れるのが現実的です。
Q. ITが苦手ですが、できますか。
A. 議事録の要約は「文字を貼る」「指示文を貼る」の2動作です。指示文は本記事からコピーしてお使いください。
Q. 議事録はそのまま提出できますか。
A. できません。AIが作るのは下書きです。ただし白紙から書くのと直すのとでは、時間も消耗も大きく違います。
Q. 何から始めればいいですか。
A. 次の会議で、同意を取ったうえで一度だけ文字起こしを試してください。「使えそうだ」という手応えの有無だけを確かめます。
介護支援専門員向けのAI研修も承っています
AIは、説明を聞くだけでは身につきません。 ご自身の端末で一度動かすところまでが必要です。
株式会社アスカゼでは、介護支援専門員の皆様を対象とした実践型のAI研修を行っています。
- 協会・職能団体様向け:会員向け研修会。アカウント準備から議事録づくりの実演まで
- 法人・施設様向け:施設内研修。自事業所の業務に合わせて構成
- 少人数ハンズオン:手元の端末を動かしながら進める形式
「触ったことがない職員がほとんど」「個人情報の扱いが心配」「一人ケアマネで相談相手がいない」。そんな段階でも大丈夫です。
セキュリティの整理と活用の実践は、必ずセットでお伝えします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は2026年8月時点の情報です。法令・ガイドライン、各AIサービスの仕様やデータの取扱いは更新される可能性があるため、最新情報は個人情報保護委員会、厚生労働省、および各サービスの公式情報をご確認ください。