「AI社員、20人体制で回しています」
組織図まで添えたこうした発信を、ここ数ヶ月でよく見かけるようになりました。
企画部・広報部・開発部・品質保証部と役割がきれいに並ぶ様子は、たしかに壮観です。
一方で、AI活用支援を手がける弊社アスカゼが、支援先の企業に必ずお伝えしていることがあります。
それはAIの「人数」は、数えようと思えばいくらでも増やせるということでう。
プロンプトを一枚書けば一人。サブエージェントを一つ足せば一人。
極端な話、「誤字チェック担当」を独立させれば、それだけで社員が一人増えます。分割の粒度を細かくするほど、頭数は勝手に膨らんでいく。
つまり人数は、定義次第でいくらでも盛れる数字です。
だからこそ、人数そのものには、ほとんど情報が乗っていません。「何人いるか」は、その仕組みが本当に成果を出しているかを、何一つ保証してくれないのです。
「役割を分ける」ことには、確かな意味がある

否定から入るのはフェアではありません。役割を分けて増やすことには、ちゃんと効く理由があります。
私たちも、支援の設計では必ず役割を分けます。
①並列化
調査と下書きを同時に走らせれば、単純に待ち時間が減ります。
②視点の多様化
同じAIでも「攻める役」と「粗探しする役」を分けて当てると、出力の質は明らかに変わります。ひとりで書いてひとりで直すと、どうしても自分の考えの延長線でしか直せません。
③属人化の解消
「うまくいったプロンプト」を役割として固定しておけば、翌週も、来月も、同じ水準で再現できる。これは、組織にとってかなり大きな価値です。
だから「役割を分ける」こと自体は、間違いなく正しいです。ただ問題は、その先にあります。「分ける」と「増やす」は、まったく別の話だということです。
増やした分だけ、確実に増えていくもの

役割を10も20も並べたとき、静かに膨らんでいくコストがあります。
引き継ぎのコスト
AIには、前後の記憶が自動で連結されるわけではありません。担当を分けるということは、担当と担当のあいだに「渡す作業」が発生するということです。
人数が増えるほど、渡す線の数は掛け算で増えていく。3人なら線は3本、6人なら15本。線が増えるほど、途中で文脈が落ちていきます。
レビューが溜まっていく
20人が動けば、20人分の出力が返ってきます。では、それを誰が読むのか。人間です。作るのはAI、読むのは人間。ここで詰みます。
生産量は増えたのに、承認待ちの山だけが高くなっていく。これが、弊社が見てきたもっともよくある失敗です。
なんでもレポートや報告書を作成させて、それを上司が確認する。これでは仕事量が増えるだけです。
よく日報を書くようにしたけれど、結局社員が多く確認できない、あるいはそれを確認するAIをまた作るといった、意味があるのかわからない構造になってきます。
責任の所在のぼやけ
「品質保証担当AIがOKを出したから大丈夫」という気持ちが少しでも芽生えたら、危険信号です。
AIのレビューは「二人目の目」ではあっても、「責任者」ではありません。
AIによるOKの数が増えると、人はそれを信じるようになる。ここは、いちばん気をつけたいところです。
保守の手間
役割ごとの指示書は、放っておけば結局使われなくなります。使わない部署の指示書を、それでも更新し続けられるでしょうか。
多くの現場では続きません。結果、使われないまま残った「幽霊社員」が何人も生まれます。
そして最後に、いちばん厄介な人数を増やすこと自体が、目的になっていくということ。
組織図がきれいに埋まると、なんとなく仕事をした気になります。けれど、それでアウトプットが増えたかどうかは、まったく別の問題です。
工程を分解していくと、残る担当は多くない

CodexとClaudeの両方で実際にワークフローを組み、担当を割り振り、増やしたり減らしたりを繰り返してきました。
そのうえで最終的に手元に残る担当は、それほど多くありません。弊社では最大でも9名のAI社員が動いてくれますが、実際動いているのは、4名程度です。
今回は一般的な社員構成を考えてみます。
チェックリスト
- 調べて・考える人:リサーチしてまとめる。
- 作る人:実装する、書く、形にする。
- 壊す人:出てきたものを疑う役。
- 決める人: 採用?やり直し?破棄を判断。
決める人は一次判断はAIに任せ、最終的に決めるかどうかは人間が判断します。ここの最終判断だけは、必ず人間が持ち続けるべきです。
ちなみに、壊す人は作った本人(AI)に自己採点させても、まず甘い点しか出ません。
だから壊す役は、必ず別セッション・別担当として立てる。ここは、分けた効果がもっともはっきり出るポイントです。
ちなみにClaudeで作成したものを、Codexでレビューさせる様な仕組みに弊社はしています。
CodexとClaudeは、「人数」ではなく「担当」で分ける

よく聞かれるので書いておくと、弊社では「どちらが賢いか?」では判断しないようにしています。
Codex
リポジトリの中を歩き回り、差分を出し、動くところまで面倒を見る仕事は、Codexに寄せています。手元のファイルに対して閉じた作業が得意な相棒、という手触りがあります。
Claude
要件を言語化する、構成を組む、原稿を書く、複数の資料をまたいで判断する仕事は、Claudeに寄せています。
これは2026年7月時点での使用体感であり、来月には変わっているかもしれません。
ただ、分けたことで得られた効果は、ツールの性能差そのものよりも、「役割が固定されたこと」 から来ている可能性が高いです。
どちらも優秀なAIなので、ツールそのものよりも、どういった仕組みにするかの方が大切なのです。
数えるべきは、人数ではなく工程

もし何かを誇るなら、数えたいのは人数ではなく、こちらです。
- 自分の手を離れた工程は、いくつあるか?
- 人間の確認が必要な仕事は、最小で何個になったか?
- 同じ手戻りが、月に何回起きているか?
「AI社員が20人います」と「請求書の作成から送付までを人間ゼロで回しています」なら、後者のほうが、話としてずっと具体的です。
前者は編成の話、後者は成果の話。弊社が支援でこだわるのは、後者です。
工程で数え始めると、人数は、目標ではなく結果になる。
工程を分解した結果、たまたま担当が3つ必要だった。それだけです。増やすときも、「同じ失敗が3回起きた工程」にだけ新しい担当を立てる。予防的な増員はしません。
まとめ
AI社員の人数は、少なくていい。 というより、「人数」という指標自体を、そもそもあまり意識しなくていいのではないでしょうか。
雇うのは、社員ではありません。工程です。
立派な組織図を描くことに時間を使うくらいなら、「自分の一日のうち、どの30分を手放すか」を一つだけ決める。そのほうが、仕事は確実に前へ進みます。
弊社では、この考え方でAI活用の設計をお手伝いしています。
数を増やすことではなく、成果につながる工程を一つずつ人の手から離していくこと。それが、私たちの考える「使えるAI活用」の姿です。
質問やお問い合わせなどありましたら、こちらからお気軽にお問い合わせください。
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こちらではより具体的な使い方などをご紹介しています。具体的な使い方気になる方はこちらをご覧ください。