女性の健康は社会全体の健康を支える重要な柱です。女性が直面する健康課題に対する理解と支援は、企業の持続可能な発展に不可欠です。
この記事では、女性の健康課題と企業が取り組むべき対策について解説します。
女性の健康課題が重要な理由
共働き世代が増えていることはご存じの方も多いかと思います。近年日本で働く女性の割合をみると、毎年増加しているのがわかります。
令和4年の女性の労働者数は3,096万人で、労働力人口の4割を超えています。女性の社会進出が進んでいるのがグラフでもよくわかります。
女性の就業者数は上昇を続けているため、会社にとって女性が働きやすい環境を整ることは不可欠です。
厚生労働大臣が認定する「えるぼし認定」というものをご存じですか?
女性活躍推進法に基づいて、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な場合に認定されるもので、近年認定数が2,000社を超えるなど注目が高まっている点からも、女性が活躍できる環境を整える会社が増えているのが伺えます。
また働きやすい環境を整えるなかで、仕事と女性の健康課題の両立についてもニーズが今高まっています。
経済産業省は女性特有の健康課題による社会全体への損失が年間3.4兆円にも上ると試算しています。この金額から考えても日本全体に与える影響が少なくないことがわかります。
(参考)経済産業省 女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について 令和6年2月経済産業省ヘルスケア産業課
こうした背景から女性特有のライフイベントを知り、望まない離職や職場の生産性向上、女性のキャリア発展を促すことは社会全体の成長にも寄与するため重要なのです。
女性特有の健康課題
女性の健康を支援するには、まずは女性特有の健康課題について把握しておく必要があります。
①月経(生理)
月経(生理)は女性の健康に大きく影響を及ぼす生理現象です。主な症状としては以下のようなものが挙げられます。
労働基準法68条では「使用者は生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した時は、その者を生理日に就業させてはならない」としています。
一般的に生理休暇と言われていますが、月経による不調を考慮し女性が必要に応じて休むことができる制度です。
日経BP総合研究所が実施した調査によると、女性労働者は強い症状があっても我慢して仕事をしているケースが多く、仕事で十分なパフォーマンスを発揮できているとは言えません。
(出典)日経BP総合研究所 働く女性の生理の悩みと仕事と生活調査
そのため制度を利用して休暇をとるのも1つの選択ですが、利用率は低く雇用均等基本調査によると女性労働者がいる事業所のうち、令和2年度中に生理休暇を請求したものは3.3%となっています。
割合として非常に少ない傾向にありますが、その背景には「男性上司に申請しにくい」が元も多く、次いで「利用している人が少ないので申請しにくい」という状況があります。
(出典)日経BP総合研究所 働く女性の生理の悩みと仕事と生活調査
②妊娠・出産
妊娠・出産は女性の生活に大きな変化をもたらします。
出産前や出産後は仕事を休んで育児に専念するケースがほとんどですから、職場としては働きながら子どをも産むことが出来る環境を整備することは復職を断念させないためにも重要な課題と言えます。
例えば「労働基準法」では妊娠中の女性の健康管理と安全を守るための規定を設けており、「女性活躍・男女参画の重点方針2023」では女性が仕事と出産を両立できる環境作りを推進しています。
妊娠中は仕事や通勤が負担になる女性は多く、負荷を軽減するための措置は切迫早産などのリスクを回避するうえでも会社側の理解が必要です。
③更年期
更年期はホルモンバランスの変化により多様な身体的、精神的な症状が現れる時期のことです。更年期の具体的な症状には以下のようなものがあります。
更年期の症状
・疲れやすい
・肩こり,頭痛
・イライラする
・めまいがする
・意欲の低下 等
更年期世代である45~54歳は女性労働者の1/4を占めており、決して少ない数値ではありません。
NHKが実施した「更年期と仕事に関する調査2021」によると、更年期によって仕事を辞めた割合が9.4%、仕事辞めることを検討した割合が10.2%となっており、働き手の確保が必要な中小企業にとっては決して無視できない割合となっています。
だからこそ更年期にある女性が働きやすい環境を提供することが求められます。
企業側が行うべき対策
会社が女性の健康を支援することは従業員の生産性を向上させるために必要不可欠です。
女性の健康支援を行う際に考慮すべき5つの対策案を挙げます。
生理休暇の導入
生理の痛みや不調に対応するため、生理休暇を導入することが求められます。ただ制度だけ導入しても利用率が上がらなければ意味がありません。
生理休暇を有給に変更したり、生理休暇という名称を変更する、電話だけでなくメールやチャットを利用して申請できるようにするといった対策も導入企業の事例をみても有効です。
休暇による人員不足が問題となるようであれば、在宅ワークができる環境を整えるなどの配慮も可能でしょう。
また上司や職場内スタッフの理解を深めるための研修も同時に行っていくことが必要となります。
妊娠・出産に関するサポート体制の充実
妊娠・出産に関するサポートでは、産前産後休暇の延長や育児支援プログラムを導入するなどが挙げられます。
サポートをおなっている企業の取り組み事例を下記に紹介します。
- 勤務体制を柔軟にする(フレックスタイム制、在宅ワークの導入)
- 育児休暇を法定を超えて子どもが満3歳になるまで取得可能にする
- 男性の育児休暇取得を推進する
- 育児休業中の給付金制度を整える など
妊娠前であれば医師の指示に基づいて従業員の配属を変更したり、重量物の運搬を制限する、休憩時間の延長や回数の増加、休憩時間帯の変更なども対策として挙げられます。
更年期障害への理解と支援
更年期に伴う身体的・精神的な変化を理解し、必要に応じて柔軟な勤務時間や環境の調整を行うことが大切になります。
特に40後半から50代の従業員がいる場合は、女性の健康窓口を設置したり、栄養指導、睡眠指導、運動プログラムといった健康管理の具体的内容を実施する事例が多いです。
年齢を重ねると健康に関する福利厚生を望む声も多いため、会社の現状を理解したうえで具体的な施策に取り組むことが求められます。
女性の健康セミナーの実施
定期的な健康セミナーやワークショップを開催し、女性特有の健康問題に関する知識と意識を高めることが重要です。
女性の健康課題を理解するうえで、知識の共有は欠かせません。特に管理職や会社役員の場合はいかに働きやすい状況を整え、最大尾パフォーマンスを発揮してもらうかが生産性を高めるうえでも大切になっています。
健康セミナーを開催する際は可能な限り、業務時間内に行うことがよいでしょう。業務時間内に行うことで、会社の取り組みに対する姿勢が従業員にも伝わります。
少なくとも年に1回は健康セミナーを開催し、健康に関する理解を深めていくことをオススメします。
メンタルヘルスのサポート
ストレス管理のためのカウンセリングサービスやメンタルヘルス休暇を提供し、心の健康もサポートすることも女性の健康を支援する上では欠かせません。
生理や更年期について「誰にも相談していない」と回答するケースが調査でも多いため、社外の第3者がカウンセリングを行うことは従業員のストレスを発散し、職場への不満を減らすと言う意味でも大切です。
保健師や産業カウンセラーと提携して、従業員のメンタルヘルスケアに取り組んでいる企業も増えているため、社内リソースが不足している場合は検討するのも良いでしょう。
女性従業員の健康支援はキャリアを継続しながら家庭生活を豊かにするために不可欠です。
会社が積極的にこれらの取り組みを行うことで、働く女性のモチベーションの向上や生産性の向上にも繋がり、ジェンダー平等の観点から重要と言えます。
おわりに
女性の健康課題に対する理解と支援は、企業の社会的責任の一環です。
企業が積極的に女性の健康を支援することで、より健全で活力ある職場環境を実現できます。女性の健康を大切にして会社の成長、そして社会全体豊かさを築いていけるように小さな取り組みからでもスタートしてみましょう。
アスカゼでは従業員の健康支援の取り組みを行っています
保健師、産業カウンセラー、理学療法士、管理栄養士と連携し、従業員の健康を通して会社の社会的価値を向上する支援しています。
出張整体、定期カウンセリング、健康セミナーもお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。