健康経営は従業員の健康を企業戦略の一環として捉え、その向上を図ることで、従業員の幸福度の向上と企業の持続的な成長を目指す経営手法です。
近年、健康経営が注目されるようになった背景には、従業員の幸福度が直接的に生産性や企業のパフォーマンスに影響を与えるという科学的な証拠が増えてきたことがあります。
今回は従業員の幸福度に健康経営がどのように影響しているのか、どのような取り組みが幸福度に関係するのか解説していきます。
従業員の幸福度が会社に与える影響
従業員の幸福度は企業の生産性や創造性、そして最終的な業績に大きな影響を与えるということが、多くの研究によって示されています。
幸福度の高い従業員はエンゲージメントが高く、創造性豊かで生産性が高いとされています。そしてこれらはすべて企業の成長に直結する要素になります。
心理学者エド・ディーナー博士によれば、幸せな従業員は生産性が31%、売り上げが37%、創造性が3倍高いという報告もあります。
CHO制度の導入
従業員の幸福度を科学的に分析し、改善策を提案する専門家であるCHO(Chief Happiness Officer)の存在も注目されています。
GoogleやZapposなど世界の名だたるトップ企業でCHOを設置することが進んでおり、CHO導入によって社員の定着率が大幅に向上した企業もあります。
CHO導入のメリット
- 離職率の低下
- 欠勤率の低下
- 売上の向上
人的資本経営が叫ばれている日本でも、このCHO制度はこれから浸透してくることが予想されます。
幸福度とエンゲージメント
従業員の幸福度は単なる個人の感情の問題ではなく、企業の戦略的な資産として捉えるべきものです。
幸福度の高い職場は従業員一人ひとりが仕事に誇りを持ち、より良いパフォーマンスを発揮することができる環境を提供します。
こうした環境を整えることで、先に述べた離職率の低下につながり、企業の収益性の向上に直結するのです。
日本企業における従業員のワーク・エンゲイジメントは、国際比較で見ると相対的に低いとされています。
この原因の1つにマネジメントスキルの不足が原因である可能性が指摘されています。だからこそCHOのような専門家が具体的なアクションプランを策定し、実行に移すことが求められます。
健康経営と幸福度の関係
会社は従業員の幸福度を高めるための施策を積極的に取り入れ、それを企業文化として根付かせることが重要です。
その取り組みの1つとして「健康経営」があります。
健康経営は従業員の健康を企業戦略の一環として捉え、その向上を図ることで従業員の生産性を高め、企業競争力の向上を目指す経営手法です。
健康経営の取り組みは従業員の幸福度を高めることにも寄与しており、その1つがストレスマネジメントです。
精神科医の樺沢紫苑氏の著書「精神科医が見つけた3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法」でも幸福度と健康の関係について述べられています。
- セロトニン
- オキシトシン
- ドーパミン
上記3つの物質は人間の幸福感に大きく関与しており、これらが十分に分泌されている状態で、私たちは幸福を感じるとしています。
適度なストレスは「やる気」を促すドーパミンの分泌を促進しますが、ストレスが溜まってくるとドーパミンの分泌が減少し、幸せホルモンのセロトニンの分泌も抑制されます。
そのため従業員のストレスマネジメントはモチベーションと幸福度を高めるためにも不可欠になのです。
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幸福度を高める健康経営の取り組み3選
従業員の幸福を高める具体的な方法を健康経営の視点で3つご紹介します。
ワークライフバランスの推進
ワークライフバランスの充実は従業員のストレス軽減と幸福度の向上に直結します。
経済産業省の報告書によると、従業員が仕事と私生活のバランスを取ることができる環境は、職場の満足度を高め、結果として企業の生産性向上に貢献するとされています。
具体的には以下のような取り組みがあります。
- フレックスタイム制の導入
- テレワークの導入
- 労働時間の短縮 など
従業員が自身のライフスタイルに合わせて仕事をすることを可能にし、仕事の効率化と心理的な満足感をもたらします。
健康プログラムの実施
従業員のための健康プログラムの提供は健康維持と疾病予防に役立ちます。
出社していても十分なパフォーマンスを発揮できない状態「プレゼンティーイズム」や、体調不良で欠勤する「アブセンティーイズム」は会社の大きな労働損失として昨今注目されています。
例えば、従業員向けストレッチやリラクゼーション整体の導入は、座り仕事の多いIT企業での導入が多い傾向にあります。
また健康的な食事の提供や栄養指導、メンタルヘルスケアなど、多岐にわたる健康プログラムを提供することで、従業員の健康リテラシーを高め生活習慣病の予防に寄与します。
こうした健康プログラムを取り組むことで、欠勤日数の減少やパフォーマンスの向上に繋がり、仕事の生産性が向上します。
社内コミュニケーションの強化
社内コミュニケーションの活性化は従業員間の信頼関係を築き、チームワークを向上させることで、職場の幸福度を高めます。
経済産業省の取り組みによると従業員が互いに支え合い、協力する文化は、職場のモチベーションを高め、企業のイノベーションを促進するとしています。
例えば社内イベントの開催やコミュニケーションツールの導入は、従業員が互いに交流しやすい環境を作り出し、職場の結束力を強化します。
最近ではアプリを使ったウォーキングイベントや、カゴメが提供している「ベジチェック」を利用することで、社内のコミュニティケーションが活発化したと、協会けんぽでも報告されています。
おわりに
従業員の幸福度と生産性の関係については多くの研究が行われ、健康状態が良好で幸福度が高い従業員は、高い生産性を保ちやすいことをお伝えしてきました。
従業員一人ひとりの幸福を大切にし、それを企業成長の原動力とする新しい時代の経営手法が健康経営とも言えます。
企業が健康経営を取り入れ、実践していくことで、企業の競争力が高まり、社会全体の幸福度の向上にも寄与するため、まさに社会的意義のある取り組みだと言えるでしょう。
参考
- Ed Diener,et al:The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?.Psychological Bulletin, 2005, Vol. 131, No. 6, 803– 855
- 東洋経済オンライン 仕事の生産性にまで影響する「幸福」の正体 幸せな社員が増えるほど会社が伸びる理由
- 厚生労働省:イノベーションの促進とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題.
- Bellet, C.et al:Does Employee Happiness Have an Impact on Productivity? CEP Discussion Paper, No 1655(2020).
- 公益財団法人日本生産性本部 「労働生産性の国際比較 2019」; Helliwell J. F. et al.
2019 World Happiness Report.
Oswald, A.et al: Happiness and Productivity, Journal of Labor Economics, 33(4) 789 - 822.(2015)
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