健康経営の推進は、企業にとって多くのメリットをもたらします。特に健康経営優良法人認定を受けることで、さまざまなインセンティブが得られます。
今回は具体的な制度やインセンティブを詳しく解説し、それらを活用するための対応策について解説します。
健康経営優良法人認定のメリット
健康経営優良法人認定は、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業に対して与えられる認定です。この認定を受けることで、以下のようなインセンティブが得られます。
①公共事業入札時の加点
健康経営優良法人認定を受けている企業は、自治体が行う公共事業の入札審査で加点されることがあります。
健康経営優良法人認定を入札加点となっているのは、昨今重要となっている企業の社会的責任(CSR)や持続可能な経営(ESG)への取り組みを評価するためです。
公共事業や自治体の入札において、企業の社会的責任や持続可能性を重視する傾向が強まっているため、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業には優遇が図られています。
事例
長崎県:建設工事入札参加者格付において、主観点に+5点加点
長野県:建設工事指名競争入札参加者の格付けに関する規定により10点を加点
②自治体による融資優待や補助金優遇
健康経営に積極的な企業は業績が良好で、事業継続の可能性が高いと考えられているため、自治体や金融機関が支援を行っています。
認定企業には、貸付利子率が優遇される制度や、設備投資に対する補助金が提供される場合があります。
融資優遇事例
秋田県の「中小企業振興資金(一般資金)の『働き方改革支援枠』」として貸付金利の引き下げ(0.2%)
補助金優遇事例
青森県弘前市:「弘前市ライフ・イノベーション推進事業費補助金(健康経営促進)」として、健康経営優良法人認定を受けている市内事業所に対し、補助対象経費の2分の1を優遇
③金融機関からの低利子融資制度
健康経営優良法人には、金融機関から融資条件が有利になることがあります。特に地方銀行では、地域企業を支援するために積極的な取り組みが行われています。
健康経営に取り組む企業は、従業員の健康管理を通じてリスク管理が適切に行われていると評価され、従業員の健康維持と長期的な就労を促進するため、事業継続の可能性が高いと判断されます。
金融機関が提供する低利子融資制度の具体例には以下のようなものがあります。
運転資金の貸付利率の引き下げ
保証料の減額や免除
特別利率、保証料率による融資
サポート預金やサポートローンの適用
具体的に地域の機関の具体的な優遇措置としては以下のような例があります。
金利優遇事例
四国銀行:「健康経営サポート融資」を提供し、健康経営優良法人認定を受けた企業に対して最大0.5%の金利優遇を実施しています
④従業員向けローン金利優遇
企業側だけでなく、従業員にもメリットがあります。具体的には住宅ローンやその他個人ローンの金利優遇制度です。
健康経営を実践する企業の従業員は、健康管理が行き届いているため、長期的な就労が期待でき、企業としても従業員の健康を重視し、リスク管理が適切に行われていると評価されるため、こうした優遇措置が受けられます。
事例
西日本シティ銀行(福岡):「健康づくり優良事業所ゴールド」に認定された事業の従業員は、「3大疾病保障特約付住宅ローン(年0.2%金利優遇)」を利用できる。
保険会社の保険料割引
健康経営優良法人以外でも、健康経営により組む企業に対して保険料の割引をしてくれことも健康経営を進めるメリットになります。
これは会社だけでなく、従業員にもメリットがあります。
事例①
三井住友海上「健康経営支援保険」
健康管理アプリ「Myからだ予想」、休業補償、そして健康経営コンサルティングサービスという3つの主要な機能を組み合わせて提供されており、保険料の割引は「健康管理アプリ」を活用した従業員の健康増進の取組状況に基づいて、翌年度の保険料を最大5%割引されます。
事業再構築補助金と加点項目
事業再構築補助金は新たな事業展開や再生を図る企業に対して支給される補助金です。
2025年1月現在、第13回の事業再構築補助金の公募がスタートしており、この補助金の採択のための加点項目に健康経営の取り組みが含まれています。具体的には「健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点」が設けられています。
事業再構築補助金は採択率が1〜10回までは40~50%台の採択率でしたが、第11回、第12回ともに30%以下の26%程度となっています。
補助金の金額も大きいだけに、自社の事業が採択されるためにも健康経営優良法人の加点は取っておくべきでしょう。
パートナーシップ構築宣言と健康経営
パートナーシップ構築宣言を行っている事業者にも加点があります。「パートナーシップ構築宣言」は、企業が取引先との共存共栄を目指し、持続可能な経済活動を推進するための枠組みです。
つまりは取引先との協力関係を強化し、サプライチェーン全体での価値向上を目指すものです。この中で健康経営は重要な要素として位置づけられており、取引先や従業員の健康維持・増進に向けた取り組みが盛り込まれています。
具体的には以下のような取り組みが必要となります。
- 健康経営ノウハウの提供
宣言を行った企業は、自社で培った健康経営のノウハウを取引先企業に共有します。これには、健康管理施策の導入方法や効果的な実践例などが含まれます。
- 健康増進施策の共同実施
健康診断や運動プログラムなど、従業員の健康を促進する施策を取引先と共同で実施することが可能です。これによりサプライチェーン全体での健康意識向上が期待されます。
- 労働環境改善の支援
労働安全衛生や働き方改革を基盤とした取り組みを通じて、取引先企業への支援を行います。これには労働環境改善やテレワーク導入支援などが含まれます。
- 意見交換会や設備案内
健康経営に関する意見交換会を開催し、自社の取り組み事例や設備(運動施設など)を紹介することで、他社への普及啓発を図ります。
パートナーシップ構築宣言は、単なる取引条件改善だけでなく、企業間で共通課題に取り組む枠組みとして注目されています。その中でも健康経営は重要なテーマであり、自社および取引先全体で推進することで、多くのメリットと社会的評価を得ることができます
インセンティブの探し方
健康経営のインセンティブは各都道府県ごとに異なります。自社のある都道府県のインセンティブを探す場合は、ACTION!健康経営のWebサイトを活用するとよいでしょう。
ACTION!健康経営 Webサイト(地域の取り組み)
ACTION!健康経営とは
日本経済新聞社が運営する健康経営優良法人認定事務局のポータルサイトで、健康経営に関する幅広い情報を発信しています
インセンティブが目的になっては本末転倒ですが、従業員の健康を支援しながら自社にもメリットがあればwin-winの取り組みとなりますので、受けられる制度は積極的に活用していきましょう。
まとめ
健康経営は企業にとって重要な戦略であり、その推進には多くのインセンティブがあります。健康経営優良法人認定や事業再構築補助金など、多様な制度を活用することで、企業は競争力を高めることが可能です。
これらのインセンティブを受けるためには、自社の健康管理施策を充実させることが不可欠です。ACTION!健康経営のWebサイトから情報を収集しながら、会社の健康施策を意味あるものにしていきましょう。
こちらの記事では「健康経営」の何から始めたら良いかを解説しています。自社の健康経営をスタートする際はぜひ参考にされてください。
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