顧客満足だけじゃない!「従業員満足度」を高める重要性と健康経営の関係

人手不足で従業員に離職されると、次の人員を探す労力が発生するだけでなく、また一から業務を覚えてもらう必要がでてきます。つまり従業員が離職することは、企業側にとって時間的・金銭的なコストが発生することになり、結果生産性の低下につながります。

 

この記事では従業員満足度を向上させる重要性と、従業員が希望する健康に関する福利厚生「健康経営」との関係について解説していきます。

 

従業員満足度を高める重要性

従業員

従業員満足度とは従業員が自分の仕事や職場に対して抱いている満足度を測る指標のことです。英語で「Employee Satisfaction」と呼ばれるため、『ES』と略されることもあります。

 

従業員満足度は従業員が組織内でどれくらい充実感をもって、モチベーションを保ちながら働いているかを評価するため用いられます。

 

マネジメントの父と呼ばれるビーター・ドラッカーは事業を支えてくれる「顧客」だけでなく、「従業員」「取引先」それぞれにマーケティングを行う必要があることを説いています。

 

「企業は人なり」と言われるように、働いてくれている従業員も重要なお客様であり、一生懸命働いてくれる仕組みを作ることが経営する者の使命になります。

 

 

実践するドラッカー【事業編】

従業員満足度を高めるメリット

従業員満足度を高めると企業側にも多くのメリットがあります。

生産性とパフォーマンス向上

 

職場に満足している従業員は、能動的・自律的に仕事に取り組むようになり、高い生産性を発揮することが期待できます。

 

ヘスケットは従業員が定着してコミットメントすることによって、収益の拡大だけでなく、高い生産性も期待的できるとも指摘しています。*1

 

仕事への取り組みが積極的であれば、生産性も向上し、組織全体の業績が向上する可能性が高まるのです。

 

離職率の低下

顧客満足度だけでなく、従業員満足度の双方を重視する企業は、人材確保の面で有利になることが厚生労働省のデータからも明らかになっています。

 

(出典)厚生労働省「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保」

働きやすい環境を整えることで、離職者が減少するのは想像しやすいかと思います。

 

離職率の原因として多いのは「社内の人間関係がうまくいかなかった」「労働時間が長い、残業が多い」「給与が低い」「休みが取りづらい」などです。これらは働きやすい労働環境が整っていないことが原因であり、従業員満足度の低下に直結します。

 

離職率を低下させるためには従業員が働きやし環境を整えた事例で言えば、サイボウズ株式会社様の取り組みがあります。

 

従業員のワークライフバランスに配慮した制度や社内コミュニケーションを活性化させる施策を実施することで、離職率が28%あったものが、現在では3〜5%程度となっています。

 

(出典)サイボウズ株式会社「多様な働き方へのチャレンジ」

 

採用コスト削減

就活生や就活生の親に対するアンケートによると「従業員の健康や働き方に配慮している会社」や、「福利厚生が充実している会社」への就職を希望する就活生が多いことがわかります。

 

(出典)経済産業省 健康経営の効果② 健康経営と労働市場の関係性

新卒者や中途採用者の採用コストを、就職みらい研究所が「就職白書2019年」で報告していますが、一人採用するためには50万円以上のコストがかかり、製造業の中途採用にいたっては100万円のコストが発生しています。コストをかけて入職した従業員が会社への不満からすぐに離職してしまうようでは、毎年多くのコストが発生することになります。

 

一方で従業員満足度が高ければ、口コミ効果や社会からの認知度も上がり、低コストで採用活動が行うことができます。

 

つまり組織は人材を確保するための採用コストを削減できるため、安定した人材の確保が可能となるのです。

 

チームワークと協力関係の向上

 

離職の理由には「人間関係」が挙げられますが、その根本はコミュニケーション不足です。職場環境への不満がなく、仕事にやりがいを創出できると、従業員間のコミュニケーションの活性化につながります。

 

コミュニケーションが活発な組織は従業員間で協力的な関係を持ち、チームワークを重視する傾向があるため、会議での積極的な発言やイノベーションの創立につながります。

 

顧客満足度の向上

 

従業員の満足度が高いことは、顧客へのサービス提供に対する姿勢もポジティブに影響を及ぼします。

 

会社に対する愛着や組織貢献の意識が高まることで、お客様への提案や接客態度が変わることが期待できます。実際に顧客維持と顧客満足度との間には相関関係があることが報告されています*2。

 

また相関関係だけでなく因果関係もあるとされていることから、顧客へのロイヤリティにつながるとも考えられています。顧客に直接関わるのは従業員のため、顧客への対応で高いモチベーションを保つことで、より良い顧客体験を提供できるです。

 

従業員満足度を高める取り組み

従業員満足度を高めるにはハズバーグの2要因理論を知っておく必要があります。

 

ハーズバーグの二要因理論とは、アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグによって提唱されたモチベーションの理論です。この理論では、仕事の満足度と不満足度に影響を与える要因を「動機づけ要因」「衛生要因」の2つに分類しています。

 

ハズバーグ

動機づけ要因は仕事自体に関連する要因で、仕事の満足度を高め、モチベーションを向上させますことに寄与します。一方で衛生要因は仕事とは直接関係のない要因で、仕事の不満足に影響します。

 

ここでポイントなのは、従業員の離職には「衛生要因」が影響している点です。厚生労働省の雇用動向調査結果によると、自主退職の多くは「人間関係」や「給与」が関係しています。そのため仕事に対する不満足を解消するには「衛生要因」のへのアプローチが必要になります。

(参考)厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要 転職入職者が前職をやめた理由」

 

ただし衛生要因は不満足が解消されるだけのため、改善されても仕事の満足度があがるわけではありません。あくまでマイナスがゼロに戻るだけのため、本当に従業員満足度を上げたいのなら「動機づけ要因」も並行してアプローチするべきです。

 

取り組み例

従業員満足度を向上させるためには、以下のような施策が効果的です。

 

取り組み内容

  • 給与や福利厚生を充実させる
  • 仕事のやりがいを感じる機会を提供する
  • 職場環境を整備する
  • 上司と部下の関係を良好にする
  • 従業員の意見や要望を積極的に聞く

 

企業理念やビジョンを浸透させることや、個人の適性にあった業務に配置することも従業員の満足度を高めることに寄与すると考えられます。

 

何のためにこの会社で働いているのか、自分はこの仕事を続けていてもいいのだろうか。こうした悩みを抱える従業員は少なくありません。こうした従業員の個性や能力を育て発揮するために、キャリアコンサルタントを利用することも1つの手段です。

 

従業員満足度と健康経営

顧客満足度を高める1つに健康経営があります。健康経営は離職率の低下やリクルート効果があることが報告されており、健康経営を実践する会社は離職率が全国平均の半分以下となっています。

(出典)経済産業省 健康経営の推進について

 

リクルート効果についても採用コスト削減のところでお伝えしたように、就活生や就活生の親は健康に配慮する会社を希望する傾向にあります。また大同生命が「健康経営優良法人に認定されるメリット」を調査したところ、「求人に対する応募が増えた」と回答する企業が多い結果となりました。

 

健康経営は人材不足の解消に繋がり、結果として過重労働となることなく、従業員にとって労働環境が整い、働きやすくなると言えるでしょう。

 

また健康経営は社内のコミュニケーション活性化に寄与することも健康経営に取り組む企業の多くで報告されています。人間関係の悩みを抱える職場は特に離職も多く、パフォーマンスを発揮しずらいことは想像に容易です。

 

ハラスメント教育を管理職に行う取り組みも健康経営には含まれるため、部下の育成という面でもプラスに働くため、動機づけや衛生要因への対策としては有効な手段といえます。

 

こうしたことから、会社が従業員の健康に配慮した働き方を提供することは従業員満足度を高める1つ手段と言ってよいのではないでしょうか。

 

健康経営についてはこちらのページでも詳しく紹介しています。

参考【これだけでOK】健康経営とは一体何なのか?会社が取り組むべき理由と内容について解説

「健康」とは個人が管理するものと認識されている方が大半かと思いますが、近年人手不足の影響もあり、会社も従業員の健康を支援する流れが来ています。   国も推進している「健康経営」の取り組みが徐 ...

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まとめ

従業員満足度を高めることは、生産性の向上や人材不足の解消、顧客満足度にも影響を及ぼし、会社側に多くのメリットをもたらします。

 

従業員満足度を高めるための取り組みを行う際は「衛生要因」「動機づけ要因」といった点を考慮した取り組みを行うことが重要であり、どちらか一方だけの取り組みでは効果的な対策ができるとは限りません。

 

どちらの取り組みも行いながら、その1つに従業員の健康に配慮した健康経営を取り入れることをお勧めします。

 

参考文献

  • Heskett, J.L., W.E. Sasser, and L.A. Schkesinger (2003) 顧客・従業員満足を「利益」と連鎖させる バリュー・プロフィット・チェーン.日本経済新聞社.
  • Gupta, S. and V. Zeithaml (2006), Customer Metrics and Their Impact on Financial Performance, Marketing Science, 25(6), pp.718-739.
  • Heskett, J.L., W.E. Sasser, and L.A. Schlesinger (1997) カスタマー・ロイヤルティの経営: 企業利益を高めるCS戦略.日本経済新聞社
  • 健康経営優良法人 取り組み事例集 令和2年3月
  • 大同生命「 健康経営 」の認知度が向上.7割の企業で取組意向

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