【組織づくりの新常識】職場は人間のために作られていない?これからの時代の循環型な働き方

働き方改革が進んでいるのに、どうして私たちの職場はこんなにギスギスして、疲れている人が多いのだろう。働く人や組織をまとめるリーダーなら、一度はこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。

 

実は、この悩みには明確な理由があります。イギリスのレスター大学で労働心理学を研究するマリア・カラニカ=マレイ教授たちは、そもそも今の職場は人間のために設計されていないからだと指摘しています。そして、その弊害が今はっきりと表れているのです。

 

この記事では、最新の心理学の研究をもとに、これからの組織のあり方と人が辞めない職場の作り方について解説してきます。

 

会社は機械、人間は部品?

会社で働く人

今の多くの会社の仕組みは、約100年以上前の工場をモデルにして作られています。いかに無駄をなくして効率よく大量に作るかという考え方であり、これを経営学では科学的管理法と呼びます。

 

この仕組みは、工場でモノを作る時代には大成功しました。しかし、知識やアイデアが必要な現代の仕事においては大きな問題を引き起こしています。

 

なぜなら、この仕組みの中では人間が機械の部品のように扱われてしまうからです。

 

人の体力や集中力は無限にある、疲れたら新しい人と交換すればいいという勘違いのもと、ただひたすらに売上や目標達成だけを求めてしまうのが、今の多くの職場の現実です。

 

燃え尽き症候群は個人のメンタルのせいではない

落ち込む女性

この人間を部品扱いする仕組みのせいで、何が起きているでしょうか。

 

世界中のデータを見ると、働く人の約半数が燃え尽き症候群(バーンアウト:心と体のエネルギーが完全に空っぽになること)を経験していることがわかっています。

 

心理学の世界には資源保存理論(COR理論)という有名な考え方があります。これは、人は自分のエネルギーや時間を奪われ続け、回復するヒマがないと、心身を壊すほどの強いストレスを感じるというものです。

 

つまり、優秀な社員が疲れて辞めてしまうのは、その人のメンタルが弱いからではありません。会社が人のエネルギーを奪う仕組みになっているからなのです。

 

スマホのバッテリーを充電せずに使い続けたら、いずれ電源が切れるのと同じです。

 

新しい働き方である循環型仕事(Circular Work)とは

循環

そこでカラニカ=マレイ教授たちが提案しているのが、循環型仕事(Circular Work)という新しい考え方です。

 

今までのように、働かせてボロボロになったら使い捨てるという一方通行の働き方ではありません。

 

しっかり働き、しっかり休み(回復)、そこから学び、成長して、また次の仕事に向かうという、ぐるぐる回るサイクルを会社の仕組みとして当たり前にしようという提案です。

 

休むことや学ぶことはサボりや無駄遣いではありません。次に良い仕事をするための充電であり、投資だと考えるのが最大のポイントです。

 

循環型な職場を作る4つのルール

会議に参加するスタッフ

では、どうすればそんな職場を作れるのでしょうか。研究では、次の4つのルールが挙げられています。

 

① 心と体はすべてつながっていると知る

疲れると集中力が落ちてミスが増え、イライラして職場の人間関係も悪くなるというように、私たちが持つエネルギーやスキルはすべて連動しています。

 

睡眠不足や疲れを放置すると、仕事の質そのものが連鎖的に崩れてしまいます。

 

睡眠不足と仕事の影響についてはこちらの記事をご覧下さい。

 

 

② 回復には投資が必要である

仕事の要求度・資源モデルという心理学の研究によれば、仕事のプレッシャーが大きくても、自分の裁量(自由度)があったり、上司や仲間のサポートがあったりすれば人は燃え尽きません。

 

会社は社員に対して単に頑張れと言うだけでなく、十分な休みや助け合える環境という資源を提供することが不可欠です。

 

③ 職場のルールが人を育てもし、壊しもする

仕事の量、評価の仕方、休みの取りやすさ。こうした職場のルールや環境次第で、人は大きく成長することもあれば、逆に心身を壊してしまうこともあります。

 

仕事そのものが悪いのではなく、仕事の設計が問われているのです。

 

④ 社員を大切にする会社が結果的に生き残る

社員の健康や学びに投資する会社は、結果的に辞める人が減り、生産性が上がり、会社全体が強くなることがわかっています。

 

優しすぎる会社は業績が落ちるのではないかという懸念は大きな誤解です。

 

管理職の評価の仕方を変えよう

面談する若手社員

会社を循環型にアップデートするためには、リーダーや管理職を評価する基準も変えなければなりません。

 

これまでは売上をいくら上げたか、目標を達成したかが一番の評価でした。しかしこれからは、チームのメンバーがどれくらいしっかり休めているか、辞める人が少ないか、新しいことを学べているかも評価に入れるべきかもしれません。

 

もしチームの売上がトップでも、部下が次々と倒れたり辞めたりしているなら、そのリーダーはチームの寿命を削って数字を作っているだけのマネジメントが下手な人と評価される仕組みにしなければ組織は続きません。

 

助けてと言える環境(心理的安全性)

相談する部下

循環型の職場を作るのに絶対に欠かせないのが心理的安全性です。これはハーバード大学の教授が広めた言葉で、こんなことを言ったら怒られるかも、バカにされるかもと心配せずに、誰もが安心して自分の意見を言える環境のことです。

 

疲労が溜まっています、やり方を変えましょう、手伝ってくださいと安全に言える職場でなければ、問題はどんどん隠されてしまいます。

 

気づいたときにはチーム全員が燃え尽きていたという最悪の事態を防ぐための命綱が心理的安全性です。

 

心理的安全性についてはこちらの記事をご覧ください。

 

 

まとめ

日本は長時間労働や人手不足が社会問題になっています。特に医療、介護、教育、ITなど、人間の専門知識や思いやりの力が必要不可欠な仕事では、人を使い捨てるやり方はすでに限界を迎えています。

 

本当に持続可能な職場とは、全く疲れない、ただゆるいだけの職場ではありません。適度なやりがいがあり、同時にしっかり回復や成長ができ、結果として長期的な成果が出る職場のことです。

 

人間は使えばなくなる消耗品ではありません。大切に守り、回復させれば、いくらでも新しい価値を生み出し続ける再生資源です。

 

経営者や管理職の皆さんは、ぜひ明日から、うちの職場は人が回復できる設計になっているだろうかという視点を持ってみてください。

 

参考・引用文献

  1. Karanika-Murray, M., et al. (2023). "The workplace wasn’t designed for humans – and it shows" / Circular Work design

  2. Taylor, F. W. (1911). "The Principles of Scientific Management"

  3. Hobfoll, S. E. (1989). "Conservation of Resources: A New Attempt at Conceptualizing Stress." American Psychologist.

  4. Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2007). "The Job Demands-Resources model: State of the art." Journal of Managerial Psychology.

  5. Edmondson, A. (1999). "Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams." Administrative Science Quarterly.

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