「健康」とは個人が管理するものと認識されている方が大半かと思いますが、近年人手不足の影響もあり、会社も従業員の健康を支援する流れが来ています。
国も推進している「健康経営」の取り組みが徐々に浸透し、毎年健康経営優良認定法人に認定される企業も増えています。
今回は健康経営をこれから始めようと考えられている企業担当者向けに、健康経営の重要性とメリット、実際に行われている事例についてお伝えします。
1.健康経営とは?
健康経営とは「企業が従業員の健康を経営課題として捉え、積極的に改善に取り組む経営手法」のことを指します。
健康な従業員は活き活きと働き、高いパフォーマンスを発揮してくれるため、従業員への健康を費用として捉えるのではなく、将来的な「投資」と考えて進めていくものになります。
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方である「人的資本経営」がアメリカの上場企業では2020年8月に開示の義務化がされました。上場企業に開示義務が出されたことは、つまり投資家が人的資本の情報を重視する流れになっていることに他なりません。
日本は特に人手不足が叫ばれているため、人材の不足は中小企業にとっては深刻な課題となっています。だからこそ健康問題で従業員のパフォーマンスが低下したり、休職・離職せざるを得ない状況にならないためには重要な取り組みなのです。
2.健康経営が注目されている理由
健康経営やウェルビーイング経営に対する注目が高まっているのにはいくつか理由があります。
①労働人口の減少
少子高齢化による労働人口の減少は企業の人材不足を招き、残された労働者に過度な負担をかける可能性があります。これは従業員の心身の健康に悪影響を及ぼし、ストレスや過労による健康問題を引き起こすリスクを高めると考えられています。
労働者一人あたりの仕事量が増加することで、職場におけるストレスレベルが高まり、特にメンタルヘルスの問題が顕著になる可能性があります。
健康経営を通じて従業員の健康を維持・向上させることで、生産性の低下を防ぎ、優秀な人材の確保と定着を図ることができます。
②社会保険料の企業負担増加
少子高齢化による労働人口の減少とも深く関係するのが社会保険料です。医療費や年金給付などの社会保障給付費が増大し、企業負担が増加しています。
現役世代の人口減少により、個々人の負担が増えることも避けられません。さらに社会保険料は主に給与や賞与であるため、現役世代の所得に偏っており、高齢者が比較的多く保有する金融資産等を踏まえて計算されないことも企業負担の増加に影響を与えています。
健康経営により従業員の健康を促進することで、医療費の削減と企業の経費節約に寄与することが期待されます。
③働き方改革との関連性
働き方改革は、日本が直面している社会的・経済的課題に対応するために政府は生産性の向上、労働環境の改善、ワークライフバランスの促進を目指しています。
働き方改革と健康経営は密接に関連しており、時間外労働の上限規制などにより、生産性の向上と従業員の健康維持が求められている点から健康経営は働き方改革の一環と言えるでしょう。
労働時間が適正化され柔軟な働き方が可能になると、従業員のストレスが減少し健康が促進されます。その結果、健康経営の目標である生産性の向上や労働環境の改善が実現しやすくなります。
④企業イメージの向上
印象の良い会社は顧客の信頼を築きブランド価値を高め、優秀な人材の確保や定着、さらには株価の向上にも寄与します。企業イメージは企業の持続可能な成長と、直接的な経済的利益に大きく影響を及ぼすためその重要性は計り知れません。
健康経営を積極的に行う企業は、社会的に「働きやすい企業」としての良いイメージを持たれ、企業が社会的責任を果たしているという印象を与えます。
さらに従業員の健康を重視する姿勢は、企業が社会に対して持つポジティブなイメージを強化し、CSR活動の一環としても評価されるため、企業のブランド価値を高め、優秀な人材の獲得にも繋がります。
⑤リスクマネジメント
企業のリスクマネジメントは事業活動における様々なリスクを特定し、評価・対応するプロセスです。リスクマネジメントには財務リスク、運用リスク、市場リスク、法的リスクなどが含まれますが、従業員の健康リスクも重要な要素です。
例えば、労働災害や職場でのストレスは、従業員の健康を害し、企業の生産性を低下させる可能性があります。また従業員の健康問題は、医療費の増加や労働力の欠如を引き起こし、企業の財務に悪影響を及ぼすことがあります。
企業のリスクマネジメントと健康経営は相互に強化し合う関係であり、従業員の健康を守ることで企業のリスクを減らし、長期的な成功に貢献すると考えられています。
取り組むべき具体的内容
健康経営の実践において、企業が取り組むべき具体的な施策は多岐にわたりますが、ここでは4つの重要な取り組みとそれに基づく事例を紹介します。
従業員の健康意識の向上
従業員自身が自らの健康に対する意識を高めることは、健康経営の基盤を形成します。
例えばオムロンヘルスケア株式会社では、従業員が家庭での血圧測定を習慣化し、生活習慣の見直しを促す取り組みを行っています。これにより従業員は自身の健康状態を把握しやすくなり、健康管理が効果的に行えるようになります。
メンタルヘルスのサポート
メンタルヘルスは、従業員のパフォーマンスに直結することは想像に容易かと思います。精神的なストレスがかかった状態で、最高のパフォーマンスを発揮することは難しいのは想像に容易でしょう。
田辺三菱製薬株式会社ではストレスチェックの結果、高ストレスに該当した人のうち、腰痛や肩こり、頭痛などの慢性的な痛みを持つ人を対象に、痛みの改善からストレスへのアプローチを行うプログラムを導入しています。
また全従業員を対象にしたe-ラーニング研修やラインケア(管理監督者が行うメンタルヘルス対策)としては、新任職制を対象に、部下のメンタルヘルス対応についてe-ラーニング研修を行っています。
腰痛予防
国民病の1つである腰痛は一生のうちにほとんどの方が経験する症状です。その経済損失は3兆円にも上るとの試算が東京大学と日本臓器製薬が発表しました。
長時間のデスクワークによる椎間板ヘルニアや、重たいものを持ち上げる重労働ではぎっくり腰になるケースも珍しくありません。
腰痛は長期的な労働力の低下を引き起こす主要な原因の一つで、従業員は仕事のパフォーマンスが低下し欠勤や早期退職につながることがあります。
サイゲームスではスタッフの健康サポートとして整体や筋トレ、朝ヨガといったいユニークな取り組みを行っています。
健康経営の組織体制の構築
健康経営を推進するためには、組織内に専門のチームや部署を設けることが有効です。健康経営をスタートするにあたってどの部署が責任をもって運営していくべきかを決めることはとても重要です。
また健康経営を進めるにあたっては経営者が最高責任者となるケースも増えています。経営トップが健康経営の最高責任者である割合は、2014年は全体の5.3%でしたが2021年には77.2%に及びます。
(参考)健康経営度調査回答結果
ボトムアップで意見を吸い上げることも大切になりますが、健康経営の方針をトップダウン的に進めていくこともまた大切なため、経営トップの理解も欠かせません。
おわりに
健康経営が注目される理由にはそれぞれありますが、いずれの項目もそれぞれが独立したものではなく、相互に関係しあっていることもお分かりいただけたのではないでしょうか。健康経営を成功させるためには、これらを理解し総合的に取り組んでいく必要があります。
従業員の健康を守り、企業の生産性を維持するために健康経営は不可欠です。
従業員が不健康な状態が続く前に予防策を組織全体で実施し、従業員の健康を維持する文化を育てることが重要です。そうすることで企業イメージがアップし、長期的な収益向上に繋がります。
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