【2026年版】AI導入で「売上」が上がらないのはなぜ?「2つの落とし穴」と利益を出す経営戦略

2025年は生成AIが一気に普及して、企業での活用の報告も増えてきました。

 

しかし「社内で生成AIを導入し、業務効率は確かに上がった。でも、決算書を見ると売上も利益もほとんど変わっていない」

 

そんな状態で葛藤を抱えているとしたら、それはあなたの会社だけの問題ではありません。実は、世界中の企業の多くがAI導入のパラドックス(逆説)に直面しています。

 

現場では「便利になった」という声が上がるのに、なぜか会社全体のお金は増えない。むしろAIの利用料でコストが増えている。多くのAI導入をした企業が、こうした会社の利益につながっていないのです。

 

この記事では、マッキンゼーやBCG、米国経済学研究所(NBER)などの信頼性の高いエビデンスをもとに、なぜAIを入れるだけでは儲からないのかを解明し、そこから脱却するための「3つの経営戦略」をお伝えします。

 

短期的なテクニックではなく、企業が生き残るための本質的なロードマップとしてお読みいただければ幸いです。

 

なぜ「生産性向上」が「利益」に直結しないのか?

PC AI

まずは、残酷な事実から直視する必要があります。

 

科学的なデータは、「現場の作業スピードが上がること」と「会社が儲かること」は全く別のメカニズムであることを示しています。

 

「現場の効率化」と「経営数値」の乖離

AIの効果自体は、疑う余地がありません。

 

経済学のトップジャーナル『Quarterly Journal of Economics』に掲載された研究(Brynjolfsson et al., 2023)によると、カスタマーサポート業務に生成AIを導入した場合、1時間あたりの問題解決件数が平均で約14%向上が報告されています。

 

特に経験の浅い従業員においては、その効果はさらに顕著でした。

 

現場レベルでは、間違いなく成果が出ているのです。ですが、経営レベルで見るとそうではありません。

 

マッキンゼー・アンド・カンパニーの2024年の調査によると、自社の金利税引前利益(EBIT:「会社が本業でどれだけ稼ぐ力があるか」を示す指標)の10%以上を「生成AIのおかげ」と説明できた企業は、調査対象876社のうちわずか46社(約5%)に過ぎませんでした。

 

つまりそれだけ生成AIを活用して稼ぐ力を高めることは難しいのです。

 

「空いた時間」の使い道が設計されていない

なぜ、現場は14%も速くなっているのに、利益には5%の企業しかインパクトを出せていないのでしょうか?

 

最大の原因は、「AIによって生まれた余剰時間」が「収益を生む活動」に転換されていないからです。

 

例えば、AIのおかげで社員1人あたり1日1時間の空き時間ができたとします。

 

しかし、経営側がその時間の使い方を定義せず、単に「早く帰れるようになった」や「別の雑務で埋まった」で終わらせてしまっていたら、コスト(残業代)は多少減るかもしれませんが、売上(トップライン)は1円も増えません。

 

多くの企業が、AIを「コスト削減ツール(守りのDX)」としてしか見ておらず、「売上創出ツール(攻めのDX)」として再定義できていないのが現状です。

 

稼げる戦略はどうするのが正解か?

では、企業が収益お上げるにはどうすればよいのでしょうか。

 

戦略①:浮いたリソースを「収益活動」へ強制転換する

売り上げUP

最初の戦略は、AIによって生まれた時間を、意図的に「お金を生む場所」へ再投資することです。

 

「楽をする」から「質を上げる」へのマインドセット変革

業務時間の短縮をゴールにしてはいけません。「短縮して、何をするか」を指標に設定する必要があります。

 

具体的なアクション

  • × 従来の指標: 処理件数、対応時間、作業完了数

  • ○ 新しい指標: クロスセル(追加提案)件数、顧客満足度(NPS)、提案書の作成数

例えば、ある営業組織では、AIを使って「議事録作成」と「日報」の時間をゼロにしました。

 

その代わり、空いた時間で「既存顧客への提案数を2倍にする」という目標を新たに課しました。

 

事務作業をAIに任せ、人間は人間にしかできない「交渉」や「関係構築」に全リソースを集中させる。これができて初めて、生産性向上は売上向上へと変わります。

 

戦略②:AIを「機能」ではなく「商品」として売る

打ち合わせする男女

2つ目の戦略は、自社のサービスやプロダクトにAIを組み込む際の「値付け」の話です。

 

多くの企業が陥る「おまけ機能(Free Add-on)」の罠

ベンチャーキャピタルOpenViewの「2023 SaaS Benchmarks Report」によると、AI機能を実装・計画している企業のうち、実際にその機能で追加料金を取れている(マネタイズできている)企業は、わずか約15%でした。

 

多くの企業が、「既存プランにAI機能を追加しました!便利なので使ってください(※価格は据え置き)」という提供の仕方をしています。

 

しかしAIを動かす裏側では、API利用料やサーバー代といった「推論コスト」が従量課金で発生し続けます。

 

つまり、「顧客が便利になればなるほど、自社の原価率が悪化し、利益が削られる」という構造になりがちなのです。

 

「不確実性」を逆手に取った「Human-in-the-Loop」の価値化

では、どうすれば値上げができるのでしょうか。その鍵は、AIの弱点である「不正確さ」を補完するプロセスにあります。

 

マッキンゼーの調査でも、企業がAI導入で最も懸念しているのは「不正確さ」。いわゆるハルシネーションです。

 

そこで、単にAI機能を提供するのではなく、「AIが下書きし、専門家(人間)が最終確認した結果を提供する」というプロセス自体を、高付加価値なプランとして販売するのです。

 

これを「Human-in-the-Loop(人間がループに入ること)」と呼びます。

 

「AI任せではなく、プロが品質を保証します」という安心感をセットにすることで、顧客は納得して追加料金を支払います。

 

AIはあくまで「原価を下げるためのツール」として使い、顧客への提供価値(と価格)は維持・向上させる戦略です。

 

戦略③:テクノロジー:プロセス:人=10:20:70の法則

天秤にかける

最後の戦略は、組織のあり方そのものです。

 

BCGが提唱する「成功の方程式」

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査によれば、AIなどのデジタルトランスフォーメーションで成功している企業は、投資とリソースの配分においてある黄金律を持っています。

 

それが「10:20:70の法則」です。

 

  • 10%(アルゴリズム・技術): AIモデルの選定や導入

  • 20%(プロセス・データ): 業務フローの変更、データ整備

  • 70%(人・組織): 社員のスキルアップ、評価制度の変革、文化の醸成

多くの失敗企業は、この比率が逆になっています。

 

最新のAIツール(10%)にお金をかけますが、それを使う社員の教育や、AIを前提とした評価制度の変更(70%)をおろそかにします。

 

具体的なアクション

  • 独自のデータ基盤への投資: IBMのレポートでも指摘されている通り、AI活用の最大の障壁は「データのサイロ化(分断)」です。AIが賢くなるための「社内データの整備」にこそ、予算を割くべきです。

     

  • 評価制度の刷新: 「時間をかけて丁寧にやった人」ではなく、「AIを使って短時間で成果を出した人」が評価される人事制度に変えなければ、社員はAIを使おうとしません。

 

弊社では生成AIを社員が使いこなせるように、医療・介護・福祉を中心としたセミナーを開催しています。

 

多くの個人情報を扱うだけに、情報セキュリティ面でも慎重にならざるを得ない業種だからこそ、正しい使い方を学ぶことが大切です。

 

詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

AIを導入すれば勝手に売上が上がる、という魔法は存在しません。

 

しかし「AIで浮いた時間を売上に変える」「AI機能に適正な価格をつける」「組織全体で使いこなす」という戦略を実行すれば、AIは競合他社を突き放す強力な「てこ(レバレッジ)」になります。

 

  1. 生産性向上 ≠ 売上向上:浮いた時間を「顧客接点」や「R&D」など、お金を生む活動に強制的に再投資するKPIを組む。

  2. おまけにするな:AI機能はコストがかかる。プロの確認(HITL)などの付加価値をつけ、堂々とマネタイズ(値上げ)する。

  3. 10:20:70の法則:技術導入は全体の1割に過ぎない。残りの9割(プロセスと人)への投資が勝敗を分ける。

次にとるべき行動

まずは、社内の定例会議でこう問いかけてみてください。

「AI導入のKPIが『削減時間』になっていませんか? これを『創出金額』に変えるには、どの業務フローを変える必要がありますか?」

 

この問いから、御社の「本当のAI活用」が始まります。技術の導入フェーズを卒業し、事業の成長フェーズへと舵を切りましょう。

 

 

参考

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