AIを使うなら『クラウド』と『オンプレミス』どっち?それぞれの違いとメリットを解説

生成AIの活用が急速に進む中、多くの企業が直面しているのが「情報漏洩への懸念」と「予測不能なコスト」です。

 

「AIを社内で使いたいが、機密データが学習に使われるのは困る」「API利用料が青天井になりそうで怖い」といった悩みは、すべてAIを動かす環境(インフラ)の選択に起因します。

 

この記事では、手軽で高性能な「クラウド型」と、堅牢で自由度の高い「オンプレミス型(ローカル型)」の特徴を比較し、貴社に最適な選択肢をお伝えいたします。

 

クラウド型AI:スピードと性能

クラウドPC

まずは、現在主流となっているクラウド型から見ていきましょう。

 

仕組みと特徴

現在、AI導入の9割以上はクラウド型にとなっています。

出所:90+ Cloud Computing Statistics: A 2025 Market Snapshot

 

クラウド型AIとは、OpenAIやGoogle、AWSなどの巨大テック企業が保有するスーパーコンピュータ上で動くAIを、インターネット経由で利用する形態です。

 

自社でサーバーを準備する必要がなく、契約すれば即座に、最新鋭の設備と最高レベルの環境を利用できます。

 

新しいAIモデルを「学習(Training)」させるフェーズでは、短期間に爆発的な計算力が必要になるため、OpenAIの「o1 」のような高度な推論を行うモデルや、動画生成などの重い処理は、クラウドの計算力が圧倒的に有利です。

 

また自社のハードウェアの陳腐化を気にする必要もありません。

 

しかし、長期的に安定して稼働させる場合、クラウドはオンプレミスよりも2〜3倍コストがかかる場合があると試算されている研究もあります。

 

また、組織の重要なデータを社外(クラウド事業者のサーバー)に送る必要があるため、「データは外に出せない」という厳しいルールがある医療機関や金融機関にとっては、導入障壁となる場合があります。

 

項目 クラウド型(SaaS/PaaS) ビジネス上の意味
初期投資 極めて低い 稟議が通りやすく、PoC(概念実証)を即日開始可能。
性能 最高レベル 常に世界最先端のモデル(GPT-4o, OpenAI o1, Claude 3.5 Sonnet, Gemini 1.5 Pro 等)を利用可能。
拡張性 柔軟 アクセス急増時も自動で対応(オートスケーリング)。
セキュリティ 懸念あり データが社外に出るため、金融・医療など厳格な業界では障壁に。
コスト 従量課金 (OpEx) 使った分だけ払うが、利用量が増えるとコストが跳ね上がるリスク。

2. オンプレミス型AI:安全と自律

ネットワーク

次に、自分の手元にサーバーを置くオンプレミス型です。昔ながらの方法に見えますが、AI時代になって再び注目されています。

 

仕組みと特徴

オンプレミス型(またはプライベートクラウド型)は、自社のサーバールームや、自社専用に確保されたクラウド領域内でAIを動かす形態です。インターネットを経由せず、閉じたネットワーク内で完結させることが可能です。

 

オンプレミスの最大の魅力は、データは自分の物理的な管理下にあり、外部に漏れる心配がないということです。

 

以前は「自社でAI」はハードルが高すぎましたが、下記のような商用利用可能な構成のオープンモデルも登場しています。

  • OpenAI:「gpt-oss」
  • Google「Gemma3」
  • Meta:「Llama 4」
  • Alibaba Cloud:「Qwen3」
  • Mistral AI:「Mistral Large」

これらは一世代前のGPT-4に匹敵する性能を持っているにもかかわらず、自社の比較的小規模なサーバーでも動かせるようになりました。

 

これにより、データを自社で完全にコントロールする動きが加速しています。

 

ただし、最初に高性能なAIサーバーを利用するために多くのキャッシュが必要で、さらには運用・保守で苦労を強いられます。

 

また利用者の急な増加に対応することが難しいといった点がデメリットとして挙げられます。

 

項目 オンプレミス型
(プライベート)
ビジネス上の意味
セキュリティ 極めて高い データが社外に出ないため、機密情報や個人情報の扱いに最適。
カスタマイズ 自由自在 自社特有の用語や業務フローに合わせて徹底的に調整(ファインチューニング)可能。
コスト 固定費化 (CapEx) 初期投資は大きいが、どれだけ使っても月額コストは一定。大量利用でお得に。
運用難易度 高い インフラエンジニアやAI人材の確保が必要不可欠。
性能 リソース依存 自社のハードウェア性能に上限が縛られるが、DeepSeek-R1のような軽量・高性能モデルの登場で改善傾向。

3. ビジネス現場での意思決定フレームワーク

評価

「どちらが良いか」ではなく「どの業務にどちらを使うか」というハイブリッド戦略が正解です。以下の基準で使い分けを行うことをお勧めします。

Case1:全社的な業務効率化(メール作成、議事録要約)

  • 推奨:クラウド型 (Azure OpenAI 等)

  • 理由: 汎用的な能力が必要であり、セキュリティ契約(データ学習不可条項)を結んだクラウド利用が最もコスト対効果が高い。

Case2:研究開発データや顧客個人情報の分析

  • 推奨:オンプレミス型 / VPC (Virtual Private Cloud)

  • 理由: 1バイトたりとも外部ネットワークに流出させられないデータの場合、インターネットから遮断された環境で、Llama 3.3 70B などを動かすのが唯一の解となる。

Case3:自社専用チャットボット(大量の社内規定を回答)

  • 推奨:RAG(検索拡張生成)構成でのハイブリッド

  • 理由: データそのもの(社内規定データベース)はセキュアな自社領域に置き、AIの頭脳部分だけクラウドのAPIを叩く、あるいはセキュリティ要件に応じてローカルLLM(Gemmma3等)を使用する。

 

意思決定チャート

AI導入意思決定チャート

まとめ

生成AI導入の成否は、技術力よりも「コスト構造の設計」にかかっています。

 

クラウド型は、最新の知能を従量課金で「借りる」モデルであり、スピード面で圧倒的に有利です。しかし、利用拡大とともにコストが膨らみ続けるリスク(OpExの増大)を抱えています。

 

一方、オンプレミス型は、自社専用の知能を「保有する」モデルです。初期投資(CapEx)は必要ですが、機密情報を一切外に出さず、どれだけ使ってもコストが変わらない「自社の資産」となります。

 

PoC(実証実験)段階では手軽なクラウドを使い、本格導入フェーズではコスト効率とセキュリティに優れたオンプレミスへ。「試作はクラウド、量産はオンプレミス」という製造業のような規律を持つことが、持続可能なAI活用の鍵となるでしょう。

 

 

組織で効果的にAIを活用するための方法についても、こちらで解説していますので、ぜひ参考にされてください。

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